地平が織り成す夢物語
僕を置いていかないで(冬天秤)
背後にふわりとした感覚を覚えて、ふと振り向けば銀色の細い髪。
腰に回された腕の力は弱く、彼が本当に男性なのかと疑ってしまいたくなる。
「…イヴェール?」
「……名前……」
きゅ、とさっきより腕に力がこもった気がする。
首元にうずめられた唇が、はかない吐息を繰り返す。
「……どうしたの?」
「…………行か、ないで…」
「……え?」
震える声。
イヴェールは私のことを抱きしめて、泣いていた。
「…どこにもいかないで…名前……君が消えてしまいそうで、怖いんだ……」
「……イヴェール…」
「…僕を置いて、いかないで……」
時は廻る。
たとえそれを望まなくても。
09*12*22
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