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「紅蓮桜花」
ふたりごと・1

「真田幸村ぁ―――!?」


「幸村“さま”だもん。」
「だーって、あの!?この前あたしが話した!?真田幸村様!?何であんたが知り合いなのよ!!」
「ぼ、牡丹落ち着いて・・・。知り合いっていうか、まあ、色々と・・・。」
「紹介、して!」




困った事になった。うっかり友人・牡丹に幸村さまの事を話してしまったところ、彼女の乙女魂に火が点いてしまった。
紹介出来る程の知り合いでは無いのだけれど・・・。




「桃殿、桃殿!どうでござるか?に、似合っているか。」

その日、幸村さまは早くに来て、私にお披露目してくださった。
「あ・・・鉢巻・・・!」
「旦那普通渡した本人に聞かないって。」
「そ、そうか。だが早く桃殿に見てほしかった。」
幸村さまは、いつも嬉しい言葉をかけてくださる。
「・・・似合っています、幸村さま。」

(桃、ちょっと。)
勝手口近くで手招きされる。そこは従業員以外立ち入り禁止なのだけれど。
「噂で聞くよりずっとかっこいい!桃もそう思ったんでしょ!?」
「う、うん・・・。かっこいいと・・・思う・・・。」
どうして他人の事なのに私が照れるのだろう。
「・・・・・・。桃、わかってるわね。」
「はあ・・・。」

ここからでも、幸村さま達が座る席が見える。確かに、かっこいい・・・と思う。
でもそれは見た目だけではなくて。

「あの――・・・今日は、紹介したい人・・・ひゃ!?」
「初めまして、私、桃の友人の牡丹と申します。」
言葉を言い切る前に、友人は飛び出してきた。
「お・・・おおおおう、牡丹殿、でござるな。」
「幸村様、ここ、ご一緒してもよろしいかしら。あ、お供の方ちょっとずれてくださる?」
なんと牡丹は図々しくも幸村さまと佐助さんの間に割り込んだ。
すみません、佐助さん・・・。

気にはなるが、私は仕事に戻る。

「幸村様って、妻子持ち?もしくはもう決まった相手がいらっしゃるの?」
――最初の質問がそれ!?
いきなりの突っ込んだ質問に、幸村さまはむせ返っている。
「旦那はそんな相手いないよ。」

そっか・・・いないんだ。

「じゃあ、幸村様は、どんな女の子が好み?」

・・・!

「こ、ここここここここのみ、と、は!?」
「積極的な女の子は、好き?」
「な、何事にも積極的なのは、よい事なのではござらぬか・・・?」

そう、なんだ・・・。
って何聞き耳立てているの私。

「嬉しいわぁ!」
「わあぁ!!」
いきなり手を握られ、幸村さまは飛び上がってしまった。
「ごめんごめん、ウチの旦那、女の子に免疫無いから。」

ぼ、牡丹凄いな・・・。私幸村さまにあんな事出来ない・・・。

「幸村様は、いつもそのような格好を?」
「格好?」
「その着流しに鉢巻。」
「いや、今日はたまたま・・・。」
「鉢巻は取った方が、お顔がよく見えますわ。」
「い、いいのだこれは・・・。」
「良い殿方は、身だしなみにも気をつけるものですわ。」
「み、身だしなみ・・・でござるか。」
「ほら、私が解いて差し上げますから。」

やめて


「幸村様、結構髪が長いのですわね。それにさらさらだわ。」

やめてよ


「や・・・やっぱりよい。この鉢巻は・・・」
「今更何言ってるんですの、いいから・・・」
「駄目、だ、と」
「いいから私が・・・」



びりっ




・・・鉢巻が・・・・・・・・・・・・

「ご・・・ごめんなさい、私、今すぐ直してくるわ!私に預けてくださる?」
「し・・・しかし・・・」

触らないで・・・


これ以上・・・




「やめて!!」




・・・店内が静まり返った。

どうしよう、思わず・・・。
「あ・・・あの、私・・・。ごめんなさい・・・っ。」

沈黙の中、次に口を開いたのは幸村さまだった。
「・・・牡丹殿。これは某のとても大切な物故、これ以上触らせる訳にはまいらぬ。」

幸村さまは表情は変わらないが、いつもより声が低く感じた。

「そう、わかりましたわ。余計な事をして本当にごめんなさい。
機会があったらまた付き合ってくださいね、幸村様。」
それだけ言うと、牡丹はあっさりと引き上げていった。




「―――桃殿、申し訳ござらぬぅ!!」
幸村さまがいきなり地面に頭をつけて謝るものだから、私も慌てた。
「幸村さま、貸してください。これ位ならすぐ直りますから。」
私は注文の合間に裁縫箱を出してきて店の椅子に腰掛ける。幸村さまは隣に座った。
「まことに申し訳ござらぬ・・・。」
「私も、大きな声を出してすみませんでした。」

嫌だった。
鉢巻を破られたのが?

――ううん。


幸村さまの隣に、他の女の子がいる事が。

みっともないな自分・・・。こんな事、牡丹に言えない・・・。

「痛っ。」
「どうなされた!?」
「いえ、ちょっと針さしてしまっただけです。」
考え事をしながらはよくなかった。
「どこでござるか?」
え・・・っ
手を引っ張られ、幸村さまの顔に近づき・・・

幸村さまの唇が、舌が、私の指に触れた。


え・・・えええええええええ―――――!?

「小さな傷は、舐めて治せと教えられ・・・。」
舌先を離しながら、幸村さまは呟く。
「すっすすすまぬ!つつつつついっ!な、舐められたら汚いでござるよな。」

「幸村さま、謝ってばっかり。」
「そう、でござるな・・・。」

自分の指に、小さく口付けをする。
幸村さまがそれを見ていたかどうかは知らないけれど。 


どうしよう
止まらない。


この気持ちは、何―――?



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