[携帯モード] [URL送信]

「紅蓮桜花」
猿飛佐助の考察。

旦那は、黙っていればモテるほうだ。(俺様には敵わないけど。)
町を歩けば女の子も結構寄ってくる。(本人気付いてないけど。)
顔立ちだけは良いんだけど、中身が・・・ね・・・。



そんな旦那は最近少し成長を遂げたらしい。

その現場にいた奴らの話によれば、・・・え、何?
お姫様抱っこ―――!?
された、じゃなくて!?した、の!?

誰をよッ?
ああー俺様もそこに居合わせたかった。

まさかその噂の少女が、最近みつけた甘味処の娘さんだったなんて。


これは。

何かの運命じゃないの!?とかここから何か展開するんじゃないの!?
・・・と思いたいところだが。
既に述べたように、旦那は普通にモテるのでこれまでも何かが展開するきっかけならいくらでもあった。
でも、いつも始まらずに終わる。

理由。
旦那は、“それ”をまだ知らないから。
残念ながら、旦那の底無しの鈍さが、女の子達を遠ざける。

だからこの娘がもしも旦那に特別な感情を抱いたとしても、
可哀相に、その想いは旦那に通じず消えていくだろう。
残酷だね。

あーあ、たまには面白い事になればいいのに・・・。


 
「佐助!腹が減った!」
昨日行ったばっかでしょ?って言っても、旦那は聞いちゃくれない。
まあ、気に入ってくれたのなら良かったけど。

旦那が見えたとたんに、看板娘・桃ちゃんの顔が輝いたように見えた。が、直ぐに目を逸らされていた。
あれ・・・?旦那、脈ありだと思ったんだけど・・・?
「い・・・いらっしゃいませ、幸村さま。佐助さん・・・でしたよね?」
「へへ。名前覚えてくれてたんだー。」
「はいっ。佐助さんっ。」
あ、可愛い。

このお店は確かに団子も美味しいけど、半分は桃ちゃん人気なんじゃないかと思う。

ところで気になる事が。
桃ちゃんがさっきからしきりにこっちを気にしているのだ。何だかそわそわして。
あ、また目が合った。
目が合う度に、桃ちゃんは笑い返してくれる。
あれ?ひょっとして脈ありなのは俺様だったりしてー。なーんて。
いやまさかまさか。そりゃぁー俺様格好いいけど。
暫くして俺様達が食べ終わる頃、その桃ちゃんが、こっちに寄ってきた。
「あの、」
「何なに?」

「幸村さま、あの、これ、受け取ってください!」
・・・・・・。だよねー。

「某に・・・?」

桃ちゃんが両の手で差し出した物。
鮮明な真紅の・・・

「鉢巻だ・・・!」

「あの、私の所為で駄目にしてしまって、その、全く同じには出来ませんでしたけど・・・。」

「なんと・・・。某の為に、わざわざ・・・」
旦那はそのまま、俯いたまま動かなくなってしまった。もしもーし?

ガタンと椅子を倒し立ち上がる。
「某、このご恩は一生忘れませぬぅー!」
旦那、案の定大感激。

「い、いえ、大袈裟ですってば。」
さすがに桃ちゃんも引いちゃってるから。
と、思ったら。

彼女はただ、恥ずかしそうにやわらかく微笑んだ。
さっき俺様に笑いかけた時とは違う、彼女の本当の微笑みだ。



この後、旦那の感動は帰る時まで続く。
「この鉢巻、大切にするでござるよ!桃殿。」
「あ・・・ありがとうございます・・・。」


帰り道。

「旦那ー、鉢巻なんて沢山替え持ってるでしょうよ。」
「見ろ、佐助!贈り物だ!俺の鉢巻だー!」
って聞いてないし。
「きっと桃ちゃん、旦那の事考えて一生懸命縫ったんだろうねー。」
「・・・・・・!!そ、そそそうか・・・。」

そうだそうだ、そのまま意識しちゃえ。

「では鉢巻の礼に、また団子を食いに来ような!桜花庵のはまこと美味い!」

あららー団子いっちゃいますか。やっぱ無理かぁ。

それから屋敷までの道程、旦那の団子話は止まらない。




ところで旦那ー、いつまで鉢巻いじってるの?



[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!