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「紅蓮桜花」
傷だらけの祝福・2

守るの。
―――ほんの些細な約束だけど

あなたと交わした約束だから、私にとって一番大切なの・・・・・・。



親友というものがいてくれて良かった。

「・・・振られちゃった。」
私は帰ってきた牡丹に告げた。

「え?」
「あはは、大丈夫大丈夫。あのね、私、幸村さまにお友達だと思われてたの。それってすごい事だよね?」
「彼に、そう言われたの?」
「・・・・・・それだけで、すごい事だよね?だから、だから・・・・・・」

―――大丈夫だよ 心配してくれてありがとう。

そう伝える前に、牡丹は私を抱き締めた。

「桃。・・・・・・頑張ったわね。」

それまでずっと泣きたくないって思っていたのに。
牡丹のその言葉で、まだ我慢していた分の涙が一気に溢れ出した。

きっと
こんな風に素直に泣けるのは牡丹の前でだけだから。

だけど、大丈夫なのは本当だよ。


「今までありがとう・・・・・・。」

「・・・桃・・・・・・?」



その夜、颯太が家を訪れた。
「桃、明日おれの家に来ないか?」
「・・・うん。」
「両親も、連れて来いよ。」
「・・・うん。」

「・・・おい、意味解ってんだろうな。」
「縁談の事、でしょ?」
「お・・・おお。いや、解ってんならいいんだけど・・・。っておれが言うのも難だが、その、・・・いいのかよ?」
「何が?」
「何がってお前・・・。その、色々と・・・。」
「・・・うん。いいよ。」
「いいん、だな?」

「うん・・・。」

それから颯太と家族三人でまた夕飯を食べたが、何を会話したのかあまり覚えていない。



「桃、何かあったの?」

「母さん・・・?」
それは後片付けの最中の事。
「向こうのお家にご招待された事よ。」
「あ・・・うん。」
「颯太くんとのお話、受けたって本当?」
「うん。」
「私、てっきり桃はまだ意地を張るとばかり・・・。ねえ、いいの桃?幸村様の事は。」

「いいの・・・・・・。やっぱり、報われない恋をするよりも私はお婿さん取ってお店続けなきゃいけないもの。
あのね。・・・幸村さまがね、この桜花庵でいつか私の作ったお団子食べたいって言ってくださったの。」
「まあ。」
「だからね、私はいっぱいいっぱい修行して、早く自分で作った物を出せるようになりたいの。」
「それで、縁談を受けるって言ったの?」

「・・・だって、私は幸村さまの“友人”だから。」


この時の私は、まさか物陰から牡丹が聞いているだなんて思いもしなかった。

「桃・・・・・・。そんなの、ただ諦める理由を探しているだけよ・・・・・・。」


明日
私は両親と颯太の家に行く。

父さんと母さんも、これできっと安心してくれる。

「桃もやっと観念してくれたか。良かった良かった。」
「良くなんかないわ、あなた・・・。桃ね、・・・・・・笑わなくなってしまったのよ。」


明日
もう引き返せなくなる。

―――結婚


私は店の厨房に立った。夜が更けるまで、ただひたすらお団子の生地作りをしていた。

全ては、明日―――――



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