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「紅蓮桜花」
その後の二人・2


未だ、何が起こったのか理解出来ぬ。


俺は佐助に声をかけられるまでずっと、自室の机にうつ伏せていた。

「旦那ー。馬と俺様置いて先帰んないでくださいよ。」

俺は一人、町から屋敷まで全力疾走で戻ってきた。その間も、頭の中は真っ白な状態であった。


「桃ちゃんに口づけ、しちゃったね。」

「・・・!!!!!」

「初めて、どうだった?」

「ち、違う・・・!!あれは、違う・・・!!」
「だけど、事故でも桃ちゃんにしちゃったのは事実だ。」
「・・・!!!ど、どうすれば・・・。どうすればよいのだ俺は・・・!!」

「旦那は、どうなの?」
「やはりもう一度正式に侘びを入れに行かねば・・・。しかし、俺がしてしまった事は言葉一つで易々と許される事では無い・・・!」

「違うでしょ。
旦那は、桃ちゃんと口づけしてどう思ったの?」

「な・・・・・・っ!?何故そのような事を聞くのだ・・・っ!?ど・・・どどどどうであったかなど、・・・わからぬ・・・・・・っ!!」
俺は再び机に伏せた。


この唇が、桃殿の唇に触れた。

目を閉じると、あの情景を想いだす。
桃殿の上に被さり、顔と顔が、唇と唇が近づき
重なり、離れるまでのあの熱を。

己の唇を、今一度なぞる。



「やわらかかった・・・・・・。」




次の日。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・あのさあ。間が持たないから二人共何か喋ろうよ。」

桜花庵の席に桃殿と二人並んで座ったまま、半刻が過ぎた。

「ゆ、幸っ」
「桃どっ」

「お先、どうぞっ。」
「いいいいや、そちらから・・・っ」

「・・・あのねえ・・・。」

俺は意を決してあの話題を持ち出そうとした。
「き、昨日は・・・、」
「き、気にしてませんからっ。これっぽっちもっ。全くっ!」
な・・・・・・
「そ、そうでござったか。しかし、まことに・・・」
「もう、忘れましたからっ。何もありませんでしたからっ!」

・・・気にしていないと言ってもらえたのだ。もう悩まなくてよいのだ。
こんなに深刻に考えていたのは俺だけだったのか。


・・・そうか。桃殿にとっては、何でもない事でござったのか・・・・・・。


また沈黙が続いた。

暫くして。

「幸村さま、あの、ですね。お話が、あるのです。」
「何でござろう?」
「・・・その、私・・・、・・・あああ、やっぱり無理です・・・。」

何か、言いにくい事なのでござろうか・・・。
「桃殿、はっきりと言ってくだされ!某、何を言われようと全身全霊で受け止める所存!」
「・・・本当、ですか・・・?」
「う、うむ。」

「私は、わ、私は―――!」


「桃見っけ。」

「颯太!」
「颯太殿・・・っ。」

颯太殿はいきなり現れ、なんと桃殿に後ろから抱きついた。
「ちょ、颯太っ。」
「なっ、何をしておられる颯太殿!破廉恥であるぞ!桃殿から離れ・・・、」

「別にいいんだよ、おれ達は。なあ桃。」

・・・・・・・・・?

「桃、大事な話があるから一緒に来てほしいんだ。」
「待って。私まだ幸村さまにお伝えしたい事があるんだから。」

颯太殿は桃殿の手を引き、強引に連れて行こうとした。


桃殿は、俺と話をしておるのに・・・!

咄嗟に、俺も彼女の手を掴もうとしていた。



 ―――“独占欲”



「・・・ッ。」

伸ばしかけた手を引いた。

違う、駄目だ。そのような感情抱いてはならぬ!
桃殿に対してそのような邪な感情・・・!

決して、桃殿に知られてはならぬ・・・。 


「離して!お願い聞いて颯太!」
「真田幸村、良い事聞かせてやるよ。」
「颯太・・・?だ、駄目!」

「・・・?」



「桃は、おれの妻になるんだ。」



「・・・颯太・・・っ!」


よく、きこえなかった。


「颯太・・・殿。今、何と申されたのであろうか。」

「桃は近々おれと夫婦になるって言ったんだ。」



桃殿と、颯太殿が、夫婦・・・・・・。



「そ・・・うでござったか。桃殿は今、それを言わんとしておったのでござるな。」

「違います!私、結婚なんてしません!」
「違うのでござるか・・・?」

「桃!もう決まった事だろ!?」

「私・・・出来ない・・・。幸村さま、私は―――」
「真田幸村、あんたここの店気に入ってんだろ?おれは、桃と結婚して二人で桜花庵を継ぐんだ。でないと桜花庵は無くなってしまう。」
「桜花庵が・・・!?」

「桃はここの一人娘だ。誰かが桃の婿になり桜花庵を継がなければならない。前にも言ったが、ここのご両親はおれの事を気に入ってるんだ。なあ、あんたも桜花庵の団子が食えなくなるのは嫌だろう?」

い、嫌でござる・・・。

「桜花庵がいつまでも栄えるのであれば・・・。それはめでたき事。」

「幸村さま・・・・・・。」

なれど、

なれど・・・・・・。





・・・・・・痛い・・・・・・・・・



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