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「紅蓮桜花」
回想・猿飛佐助の伝言。


何で俺様、こんな事してるんだろう。


上田に着いたその日、つまり昨日の夕方の話になる。
桃ちゃんが親に嘘ついてここまで来てしまった事が発覚した。
その後俺様は桃ちゃんの口裏合わせの為に、上田から甲斐へと引き返したのだった。


彼女のお友達・牡丹ちゃんは、まあ何というか派手で積極的なお人で、彼女とはまるで正反対だ。

なので、牡丹ちゃんを見つけるまでにさほど苦労はしなかった。
何故だか、だんだんと人気の無い路地へ入っていってる。
(・・・そういえば、このお友達の家って何やってんだろ。)

「・・・さっきからつけてきてるのは誰かしら?」

(俺様の気配に気付いた!?)

「いい男が傍にいるとわかっちゃうのよ。」
「そりゃーどうも。」
俺様は牡丹ちゃんの前に出た。
「あら・・・。・・・誰だったかしら。」
「記憶から消されてるし・・・。」

「ああ思い出したわ。幸村様のお供の人。何か用?」
あいっかわらず俺様の扱いがひどい気がする。

「俺様回りくどいの苦手だから単刀直入に言うけど、桃ちゃんが両親に内緒で真田の旦那とお泊りするから牡丹ちゃん家にいる事にしといて。」
「何その面白い展開!!」
期待通りの食いつき様だった。

俺様はこれまでの経緯を話す。

「颯太と結婚するって噂、やっぱりほんとだったのね・・・。ねえ――桃、そんなに悩んでいるの?」
「まあね。現実逃避しちゃう位だから。このご時勢、桃ちゃんの意思だけで婚約破棄は難しいんだろうね。」

「ふうん・・・・・・。でもまあ、あたしには関係ないわ。」
「あらー、随分と冷たいお言葉。」
「だって・・・。桃、そんな大事な事あたしには話してくれなかったんだもの。」
「桃ちゃんは、誰にも話してないみたいだよ。ああ、俺様は偶然立ち聞きしちゃっただけね。・・・たぶん今、一人で答えを出そうとしてるんだ。」

「・・・ほんっと馬鹿。」

溜め息混じりに出た言葉には、どこか愛情を感じた。


「ねえお供の人、桃に伝えて。―――“前に進め”って。」
「うん?いいけど・・・。」

「あたしね、桃が幸村様とうまくいくといいなってほんとに思ってる。あの娘が初めて恋をしたんだもの、応援してあげたいのよ。叶ってほしいのよ。あの娘が傷つくところなんて、見たくない・・・。」
「随分大切にしてるんだね。」
「ええ、大切よ。あなたも、幸村様の事が大切でしょ?」

ああ

そうか。

だからここまで来たんだ。


旦那を応援してるから、彼女に諦めてほしくないんだ。

傷つくところを見たくないのは、俺様だって同じなんだ。

「お互い苦労するよね。」
「ええ、そうね。でも、」


―――――その恋を、どうか叶えて。


背中を少し押してあげる。だから、自分の想いを懸けて愛する人のもとへ向かって。


“前に進め”





「・・・最後に聞いてもいい?」
「何かしら。」

「桃ちゃんは、君の事どこまで知ってるの?」
「・・・・・・何の事?」
「君、忍の気配に気付くなんて只者じゃないよねーって話。・・・もしかして、同業者だったり・・・。」
「ご想像にお任せするわ。」
「もう一つ。旦那は騙せてたみたいだけど、君っておと・・・」

「それも、ご想像にお任せするわ。」

・・・桃ちゃんのご友人は侮れない。



 <次頁あとがき>

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あきゅろす。
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