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「紅蓮桜花」
秘密の旅路・9 ふれる


“それ”について前に聞いた事がある。

有り得ぬ。

何という破廉恥な行為なのだっ。

し、信じられんっ!!

そのような事をせずとも、生きる上では何も問題ござらぬではないかっ。





佐助と話し終えた後の桃殿は、すっかりいつも通りになっていた。
そういえば、昨日上田に着いた直後も桃殿は佐助と何やら話しておった。

「桃殿、昨日も佐助と話しておったようだが何を・・・。」

「えっそれは・・・。」
「秘密ー。」

「・・・・・・。」
面白くない・・・。

「何脹れてんの旦那。あー仲間外れにされて拗ねてんでしょ。」
「拗ねてなどおらんっ!」

何だ、これでは桃殿が他の者とおるのが気に食わないみたいではないかっ。


――確か、以前にもその様な事があった。


嫉妬・・・。

その時の感情を、こう呼んでいた。

違う。いくら友人といえど、桃殿は俺だけのものでは無い。
誰と居ようと、誰と話そうと、俺が腹を立てるのはおかしい。

これはまるで・・・・・・


 独占欲


その言葉が脳内を過ぎった。


どくせんよく?何だ、それは。

独占欲・・・自分ひとりのものにしたいという気持ち。

つまり、桃殿を・・・・・・・・・


・・・ひとりじめにしたい・・・・・・・・・?



風を受け、桃殿の長い髪が揺れる。
俺は今、前に乗せた桃殿の体温を一身に感じている。

桃殿は今、俺だけのものだ。


(・・・違う!こんな事を考えてはいかん!)

こんな事を考えていると知ったら、桃殿はどう思われるだろう?


 桃殿は、俺の事をどう思っているのだろう。




俺達はいつの間にか桃殿の住む町まで戻ってきていた。

「幸村さま、本当にありがとうございました。私、楽しかったです。」

「・・・某も、楽しかったでござる・・・。・・・その、桃殿、」
「はい。」
「・・・その・・・・・・。いや、今降ろす。」

桃殿を馬から降ろす為に、先に降りようとしたその時であった。

「どうしたのだっ朱羅。」

愛馬・朱羅が暴れだした。

「落ち着け!朱羅っ!」

俺と桃殿を乗せたまま、朱羅は前後に大きく跳ねる。
「桃殿、某にしっかり掴まっていてくだされ・・・!!のわっ。」

愛馬に突き飛ばされて、俺は地面に倒れ込んだ。





痛たたたたたた・・・

・・・・・・桃殿は無事であろうか・・・








ん・・・・・・?なんだ・・・・・・?




やわ・・・らかい・・・・・・何かが・・・




口に触れて・・・・・・




口・・・唇に・・・

触れて・・・・・・?










・・・・・・!!!!!!!??



桃殿の上に覆い被さったまま、
俺の唇は、桃殿のそれに触れていた。





「あ・・・う・・・あ・・・あああ・・・あ・・・その・・・
ししししし失礼致したぁ・・・!!」


俺は、思わずその場から逃げ出してしまった。

桃殿の顔が見れなくて。


滅茶苦茶だ。

俺は今、どんな顔をして走っているのだろう?



「うわぁうわぁうわぁうわぁうわぁうわぁうわぁうわぁぁあぁぁぁぁ!!!!」




“あれ”を何と呼ぶか聞いたことがある。


あれは・・・・・・・・・




・・・・・・口にできるかあぁぁぁ!!!




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