「紅蓮桜花」
出逢い・1
春―――きっと君は、恋をする。
――――――――――――――――――――――
ある昼下がりの事。
甲斐へと続く山道を、赤備えの集団が通る。
―――武田軍。
「声・・・?」
呟くのは紅蓮の上着に身を包んだ青年。
彼の名は真田幸村。
まだ十七の若者であるが、隊を率いる程の実力の持ち主である。
「今、悲鳴のようなものが聞こえたのだが・・・。」
幸村は振り返って近くの家臣に尋ねる。
「え、そうですか?」
「・・・けて。・・・れか・・・!」
「やはり・・・する。」
今度は家臣たちにも聞こえた。その声は薄暗い崖の下から響いてくる。
「どーうーなーさーれーたー?」
馬から下りた幸村は、底に向かって叫んでみる。
「・・・て・・・・・・まって・・・」
「駄目だ、聞こえぬ。」
「幸村様、危険ですのであまり乗り出されない方が・・・。」
「それに、どこぞの手の者かもわかりませぬ。ここは拙者が様子を・・・。」
「うわあああああああああ」
「ゆ、幸村様!?」
遅かった。
若き主は崖を高速で転がり落ちていった。
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