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「紅蓮桜花」
ただ望むこと

・・・最近、幸村さまが来てくださらない。

「何かあったの・・・?それとも・・・。」

どうして・・・
今会いたいのに。あなたの笑顔を見たら、きっと私、迷ったりしない。


あの日―――颯太の言葉の翌日、父さんの口からそれは告げられた。
「颯太をお前の婿にする。」
「父さん・・・それ、本当なの?」
「今度は正式に決まった事だ。颯太の両親もお前を気に入っているんだぞ。」
「本当、に・・・・・・。」

「お前は、結婚するんだ。」


結婚・・・・・・。

実感がわかない。急な展開に未だ着いていけず、私は町をふらふらうろついていた。
「嘘。嘘嘘、急すぎる。まだ先の事だって言ったのに、何で急に・・・。」


・・・私を、幸村さまと引き離すため・・・・・・?


「諦めろって・・・?だから無理矢理結婚させられるの・・・?
それなら颯太は利用されただけじゃない・・・。」

「それは違う。」
いつの間にか颯太がいた事に気付いていなかった。
「おれは前から桃が好きだ。お前がわかってなかっただけだ。」
「え・・・。」

公衆の面前で再度告白されてしまった。

「・・・私、でも!」
「お前、あいつと本気で結ばれるとでも思ってんのか?」
「それは・・・っ。」
「本当はお前だってわかってんじゃないのか?」




本当は 私だって―――


―――出逢った時からわかっていたでしょう?
あのひとは、私とは別の世界に生きるひと。


巡り逢わせてもらえただけでも幸福だというのに
私はいつしか同じ世界にいると錯覚してしまった。


私を救ってくださった、優しい方・・・。
またお逢いできただけでも嬉しかった。

これ以上、望んではだめなのに。

だめだって、止めてくれたのに。


だって・・・

「それでも好きなの・・・・・・・・・。諦めるなんて出来ないよ・・・・・・!!」

「なら桜花庵は・・・桜花庵はどうなるんだよ!?おやじさんはどうなるんだよ!!」
「私・・・・・・っ。」


「お願いだ、おれを選んでくれ。」

本当は颯太も私もわかっている。颯太を好きでも、たとえそうでなくても、私には選ぶ権利なんて無い事を。

「泣くなよ・・・。」

それなのに、颯太は私の気持ちを聞いてくれた。
ごめんね。恋をしたのが、あなたでなくて。

ごめんなさい、父さん。



「ごめんなさい・・・・・・。ひとりにして・・・・・・。」

「桃―――・・・。」




幸村さま・・・・・・会いたいです・・・。
今あなたに会いたい・・・・・・。


誰か、諦めないでいいよって言ってよ・・・。




「・・・俺様凄い話聞いちゃった・・・。」
忍ぶ影は、主への報告に困っていた。



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あきゅろす。
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