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撫子の嫁
撫子の嫁 中編
長政一行は加賀へと向かっていた。
市はよく、まつから料理指導を受けている。今回も前田夫婦のところに行っているのならいいのだが。


―――――

 「――でも、戦が・・・。」
 「貴様はここでじっとしていろ、市!何故言う事が聞けんのだ。」
 
 これは、先の戦に出陣する直前の話だ。

 「市も・・・長政さまと一緒にいたい・・・・・・。だから戦う・・・・・・。」
 (だが市、貴様にもしもの事があったら私は・・・。市だけは、絶対に守らねばならん・・・。)

 「・・・駄目だ。」
 (酷い夫と思われようと)
 「貴様は足手まといだ。その腕で出陣する気か?馬鹿げている。戦場を舐めるな!それこそ悪!」
 (市を危険な目には合わせん!)

 「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。」
 

 「お前は・・・必要ない!!」



―――――

「こ・・・これか・・・!!」
この一言が、市を・・・・・・。


だがこの話には続きがある。


―――――

 「姫様、泣いてはなりませんぞ。」
 「なりませんぞ。」
 「なりませんぞ。」
 「なりませんぞ。」
 「なりませんぞ。」

 「この人たちは・・・・・・?」

 「新しく雇った“五本槍”という集団だ。」

 「姫様、殿は素直になれないお年頃なんですぜ。」
 「殿の繊細な本当のお心は、」
 「“市”に何かあったらボクもう生きていけなーい、みたいな。」
 「愛する妻は、俺が守ってやるぜ!みたいな。」
 「だから、こういう男はツンツンしてても、ときどきデレデレなんで大丈夫ですよ!!」

 「そう、なの・・・・・・?よかった・・・・・・。」

 先程の内に秘めた気持ちを、新入りの隊員達に全部解説されてしまった。

 「・・・・・・・・・ッ!!減給ッ!!」
 「!!!!!」



―――――

「やはり違うようだ・・・。しかし・・・・・・
今とても不愉快な出来事を思い出したぞ・・・。」

「さ、殺気がっ!!殿から殺気がぁっ!!」


それにしても。
市が出て行く理由がまるでわからん。

・・・もっと前まで遡ってみるか・・・・・・。



―――――

 「長政さま、市のこと、嫌じゃない・・・・・・?」
 「何故そんな事を聞くのかわからん。貴様と私は今日から夫婦なのだ。
  嫌であったらこのような・・・・・・。この・・・ような・・・・・・・・・」

 そう、これは二人が結婚した日の夜だ。
 つまり、初夜・・・・・・・・・

 「長政さま・・・・・・・・・?」
 「市、貴様はどうだ?これは政略結婚だ。相手を選ぶ権利の無い貴様が不憫で、な・・・。」
 「ううん・・・。」
 市は、まっすぐ長政の瞳を見据える。
 「市、長政さまがいい・・・・・・。長政さまがいい、の・・・・・・・・・。」
 「市・・・・・・・・・」
 「長政さま・・・・・・・・・」
 「・・・市・・・・・・・・・!!」
 
 「・・・あっ」



―――――

「わあああああああああああ!!」
ヒヒーン!
今度は馬が先に驚く。

「ど、どうしてこうさっきから・・・!!」
「・・・長政様!?顔真っ赤ですよ?」


つまり、市が出て行く理由など、さっぱり思いつかなかった訳で。


一向は加賀・前田家に到着した。


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