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蒼い世界に指切り
第2話


大六天魔王が滅び早半年。

束の間の平穏。
―――は政宗には訪れなかった。


「政宗様、今日こそはご決断なされませ!」
「Shit!しつこいぜ、小十郎。」

家臣のお小言が増加し、屋敷の中には政宗の心休まる場所など無かった。

「窮屈だな・・・。」

そういう時、彼は決まってある所へ出向く。



「―――最近おめえさん、よく来るだな。」

「An?悪いか?」
「そんな事無えだ。その、嬉しい・・・べ?」
「素直だ。」

齢十三の少女―――いつきは、またも銀の髪をくしゃくしゃにされる。



「また、茶色いひとから逃げてきただか?」
「まあな、色々あんだよ。」
「色々・・・。おらは農民だから、きっとおさむらいの悩みなんて聞いてもわからないだな・・・。」

「別に言いたくない訳じゃねえ。
あー・・・オレも二十になったからな。最近小十郎が嫁もらえ、嫁もらえってうるせえんだよ・・・。」
「おさむらい・・・結婚するだか・・・。」
「まだ考えてねえな・・・。」
政宗は大きなあくびをすると、いつきの膝の上に頭を乗せ横たわった。

「な、何だべっ!?」
「アンタといる方がずっと落ち着く。」
「んな事言われても、おらは落ち着けねえだ・・・っ。」

両膝にかかる重みが、柔らかい髪が、いつきの鼓動を速める。

「オレの今の夢は、天下を獲る、それだけだ。他の事は考えたくねえ。」

「なら。」

いつきは、蒼い空を見つめ応える。

「おらの夢は、おめえさんがその夢を叶える事だ。」
少女は無邪気に笑った。

「おめえさん、前に言っただ。おら達農民がおてんと様の下で笑って暮らせる世を見せてくれるってな!」


それはあの日。
魔王を討ち取る為に旅立つ彼が、いつきに告げた“夢”。


「・・・ああ、言ったな。」

「だから・・・ん。」
差し出したのは、小さな細い小指。
「何だ?」
「指切りだ。おめえさん知らねえだか?」
「指、切り・・・。」
「ほら、こうして小指と小指を絡ませて・・・約束の儀式ってやつだべ。」


熱をもつその小指が、ふたりの夢を結びつける。


「約束してほしいだ。おらの夢を叶えてくれるだか?」
「―――OK,約束する、・・・いつき。」





「政宗様、どちらに行かれていたのです!」
「小十郎、縁談の話は無しだ。直ぐに支度をしろ。」



今はただ、前に進む事だけを考えろ。

「他の事は考えねえ、って言ったのにな・・・。」

今日ひとつだけ、望みが増えてしまったから。



―――夢を果たせたその時も、傍らに君がいてくれたら。






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あきゅろす。
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