小説
物真似は船上にて(りんご様キリリク)
勇ましい波の音。
歌う様なカモメの声。
しかし、それらは決して海賊船にあるデッキの上にいる三人の男逹には届かない。
沈黙が続く中、彼らはようやく顔を上げると、「じゃんけん…」と一斉に叫び始めた。
事は彼ら―船に残ったクリュー逹がが商船から奪った宝物を鑑定している時だった。
「おい!これ見ろよ!」
タガーが手に持っていたのは真っ白でふわふわの服。
これには一緒にいたミストとマンゴも驚いた。
それはどう見ても彼らのリーダー、グロールタイガーが日頃想いを寄せるグリドルボーンの毛並みにそっくりなのだ。
これを見たミストは、にやりと笑い、ある提案をした。
「ねぇ、誰かグリドルの真似してくれない?」
「…似合うか?」
マンゴがいかにも楽しそうに笑いながら真っ白な衣装を触る。
じゃんけんで負けたにも関わらず、お気楽に楽しむマンゴに皆も笑顔で応える。
「似合う、似合う!」
「ソノークーイ!てやってみて!」
「ソノークーイっ!」
「いや、もう少し高く!」
「ソノォクゥゥイ!」
船上には、三人分の笑い声が響いていた。
「…」
マンカスとスキンブルは自分たちの船にあるデッキの上ではしゃぐ三人の仲間を見ていた。
タイガーについていったついでに町を歩いていた二人は、目を疑う様な光景に土産が入った紙袋を落としてしまった。
「…あいつら、馬鹿、だな。」
マンカスの淡々とした言葉にスキンブルも頷いた。
「たまには…いいんじゃないの?こういうの。」
スキンブルの乾いた笑い声がその場から風に乗って流れていった。
「と、物語にはこう、書いてあったんだ。」
溜め息を付きながら話すガスから、マンカスとスキンブルはぼんやりした眼差しをジャンクヤードの中心に向けた。
「…きっと、こんな光景だったのでしょうね。」
そこには、グリドルの衣装を来て真似をするマンゴと、そんな彼を囃し立てるタガーとミストの姿があった。
「ソノォクゥゥイ!」
全くといっていいほどに似ていない物真似に、マンカスとスキンブルも呆れ顔で溜め息を付いた。
りんご様、久しぶりのキリリクありがとうございました!
劇中劇ネタ、初めて書いたのですが、いかがでしたか…(ネタに走ってすみません!)
これからもよろしくお願いします!
※ご報告、待ってます!
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