小説 お雑煮を食べましょう。 「…美味しい!」 「お姉ちゃんさすが!」 リンとミクが交互に話し掛ける。 私はくすりと笑いながら、お雑煮を前にした皆を見つめる。 二人の隣では、ユキとミキが正面にいるグミと雑談を行っていたり、がっ君とテルがお年玉渡す宣言をしていたり、レンがルカにリリィ達がもうすぐ来るとか言っていたり。 思い思いの時間がそこには流れていた。 (そう言えば…。) みんなで炬燵を囲んで、お雑煮を食べるお正月は初めてだ。 でも、記念日があるたびに皆で集まって祝うことは多いので、珍しい光景ではない。 「いいね、こうやって皆で過ごすお正月って。」 お雑煮を食べ終えたカイトが優しく微笑みながら私に囁く。 皆が集まる事を、私と一緒に喜んでくれる人。 「これこそ、一番のお祝いの姿よ。だから…。」 この着物を選んだの。 と、私はカイトに囁き返した。 赤地の着物には、沢山の兎が描かれている。 「綺麗だね。選んだ事に何か意味はあるの?」 「願掛け、と言えば良いのかしら。」 「どんな願い?」 「この着物に集った兎のように、また今年も皆で一ヶ所に集まって、楽しいことが出来ますように。」 柔らかく微笑むカイトと私の周りでは、相変わらず皆の時間が流れていた。 [*前へ][次へ#] |