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小説
冷たくとも温かくとも(カイト誕フリー)

銀色のバケツからディスペンサで丸く掬い上げたアイスを、硝子の器に移す。
乳白色の中に黒くて存在を示すには十分な大きさがある粒を混ぜたそれに、彼は子供のようにきらきらとした瞳を見せた。
「召し上がれ。」
メイコが言うと、カイトはいただきます。と一言言ってスプーンでアイスを口に運んだ。
冬の時には好ましくは思わない冷たさの中からバニラとチョコチップの柔らかな甘味が口内に広がり、カイトの頬が緩む。
「美味しいなー。流石はめーちゃん。」
「どういたしまして。作りがいがあったわ。」
メイコが達成感に満ちた清々しい笑みを浮かべ、バケツの中に残っているアイスを見ていると、急に抱きすくめられた。
振り向くとやはりカイトのご満悦な顔があり、思わず胸が高鳴る。
「めーちゃんは温かいね。アイスを食べた後はこうするのが一番だ。」
「そ…そうかしら?」
あんたこそ温かいわ。と心臓の音がうるさい胸の中で呟きながら、メイコは背中をカイトの胸に預ける。
その温もりを感じながら、カイトは甘い気分になっていた。

("甘い"って、不思議だな。)
冷たい中にも甘い中にもあるんだから。
そんな事を考えながら、カイトはメイコを更に強く抱き締めた。


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あきゅろす。
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