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小説
オトナのオカシ(ハロウィンリクエスト企画)


「がっくん、トリック・オア・トリート!」

ハロウィンの日も終わろうとしている時に、そんな台詞を叫びながら、フランケンシュタインの格好を解こうとした拙者に右手を伸ばして来たのは、紛れもなくメイコ殿だった。

拙者は暫く瞬きをし、彼女の姿を凝視した。

白いフリル付きの白いシャツと黒いスラックス、そして、裏の生地が赤いマント。

吸血鬼、だろうか。

「…メイコ殿、一体何を…。」

「だーかーらー!何か頂戴って話!」

左手も差し出し、五本の指をひらひらと動かす。

 赤らんだ顔や酒の匂いから、酔っていることは明らかだ。このまま引き下がる展開は無い。
取り敢えず、ハロウィンらしくカボチャプリンをあげようとした。

―が。

「もう一つ欲しいーっ!」


メイコ殿はマントをはためかせながら、肩を揺らした。

「もう一つ…とは?」
「私は大人なのー!吸血鬼だから血のように赤いワインも欲しいのぉぉ!」

ちょーだい!と叫ぶメイコ殿のご期待は残念ながら叶わず、マスターのパソコン、つまり拙者の家には赤ワインは無い。

悩んでいると、拙者の頭がある物の存在を思い出した。

拙者は急いで冷蔵庫へ向かい、それを取り出してスプーンを添えてメイコ殿に差し出す。

「…ワインゼリー?」

首を小さく傾げ、ワインゼリーを受け取り、スプーンで掬って口に運ぶ。

「うん、なかなかいいお味!」
メイコ殿の顔がぱぁ、と明るくなる。

やっと、落ち着いた。と思ったその矢先、


「トリック・オア・トリート!がくぽ、カボチャプリンとアイス頂戴!」

メイコ殿同様に、狼男に扮したカイト殿が顔を赤らめて我が家に入って来た。


やれやれ、静かな夜は中々訪れないものか。

ワインゼリーに当たる照明の光が、メイコ殿の至福の時を語っているように見えた。



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あきゅろす。
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