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小説X
とらんすふぉーむ!(すーさんへ※FGキャラ性転換)
※本編ともパラレルともとれる世界観です。
※ハンクは青くありません。





爽やかな小鳥の囀りと、白い陽射しはいつもの朝と変わらなかった。
勿論、部屋の様子も眠りに落ちる前と大きな違いはない。
ただ、鏡に映るレイブン本人だけが違っていた。

「これは…無い。」
そこには蒼い肌の女ではなく、蒼い肌の男だった。
眠っている時に能力が発動してしまったのだろうか。女としての丸みはなくなり、まっ平らな体つきになっている。
「いけないいけない。私ったら。」
低い声を上げて溜め息をつきながら、何時もの姿になる。
しかし、何故か違和感があるのだ。
合わない服を無理矢理着た、そんな感じだ。
「ま、そのうちいつも通りになるでしょう。」
声もいつも通りになっていることを確認し、レイブンは部屋を出た。

鼓膜を破りそうな女性の叫び声を聞いたのはその時だった。
「ショーン!君もか!」
廊下を駆けていったのは、見たことのない小柄な女性だった。

「え?」
レイブンは瞬きをすると、その女性の後をついていった。
彼女はショーンの部屋に飛び込み、暫くした後、レイブンと歳が近そうな女の子と一緒に出てきた。
その顔はショーンに良く似ている。
「え。」
瞬きをしていると、後ろから複数の女性の声が聞こえてくる。
恐る恐る後ろを振り振り返ると、見知らぬ女性が四人もいた。

突然のことに、レイブンは思わず、自分の両頬を強く叩いてしまった。


「いきなりあれはひびったよ、レイブン…。」
「ごめんなさい…。」
未だに痛みの引かない頬を擦りながら、レイブンは兄であるチャールズの話を聞いていた。
信じられないことに、レイブンが最初に出会った女性はチャールズだったのだ。
他の女性たちも、話を聞いていれば共に時間を過ごす仲間だった。

「レイブンは朝起きたら男になっていたのか…。」
「眠る前はみんないつも通りだったよな。俺達は寝ている間に性別が変わっていたのか。」
「ああ、ニュースでそんな話は聞いていないから、僕らだけだと思う。」
チャールズとエリックの会話に、未だ晴れない違和感の原因が性別の変化によるものであることを理解しながら、レイブンは目を忙しなく動かしていた。
チャールズやショーンは多少なりとも面影はあるが、エリックやアレックスになると完全に別人である。何だか別の家に来てしまったようで、居心地が悪い。
(それにしても…二人とも目立つなぁ。)
目の動きを止めて、チャールズとその隣に座るエリックをじっと見つめる。
面影があるとはいえ、チャールズも顔付きは全く異なるものになってしまっていた。
とても綺麗な目鼻立ちは、アンティークの人形が持つ可憐さを醸し出しており、彼のコンプレックスだった童顔を、男を落とす武器に変わえていた。

エリックの方は、前髪も後ろに流さなければならないほどのストレートの長髪や、鼻や目の形に至るまでの全てが計算によるものかと思えるくらい綺麗で、チャールズが人形なら、彼は女神の彫刻だと例えることが的確なくらいだった。

レイブンが暫く二人を見ていると、チャールズがある方向を見ながら言葉を発していた。
「…ところで、さっきからショーンは僕らのどこを見ているのかな。」
突然放たれた言葉に首を傾げながら、ショーンを見ると、確かに彼はチャールズとエリックを見ていた。
しかし、その視線は顔よりもやや下だ。

「いや…二人とも、自分の胸は触ったりしたのかなって。」

場の空気が一瞬だけ凍った。
レイブンがショーンの視線を追うと、確かに二人の胸に辿り着いた。
「おい!緊急時に何考えているんだよ!」
「だってチャールズのはでかいし、エリックのは綺麗で目立つし、触ったり見たりしたいとか考えない奴がいるか?」
アレックスとぎゃあぎゃあ騒ぎだしたショーンだが、彼の話には十分な説得力があった。

チャールズは小柄ではあるが、ここにいる人物のなかで一番胸が大きい。いや、他のメンバーたちとは話にならないくらいの大きさだ。
一方のエリックも、チャールズ程ではないが他のメンバーたちより大きい。だが、最も注目するべきは形の良さだろう。ぴんと張ったその胸は、服の上からでもとても目立つ。

「…てか、まだ俺自分の胸すら見ていないんだけど!折角のチャンスなんだし、見せ合いっこしようぜ!」
ショーンはそう言いながら立つと、チャールズとエリックを立たせた。
「し、ショーン?気持ちは痛い程わかるけど、まだ何も…。」
「いいじゃんか、難しいことは後で!」
「全くお前は…。」
ショーンに引きずられるように、二人は部屋を去り、誘惑に負けたアレックスもぶつぶつ何か言いながら後を着いていった。

部屋には、レイブンとハンクだけが残された。
「…貴方は行かないの?」
「うん。いくら女の身体になったとはいえ、やっぱり見るのは恥ずかしいし。」
ハンクはそう言いながら、いつもよりもずっと愛らしくなった顔に照れ笑いを浮かべた。

「ねえ、レイブンは男になったんだよね。」
「ええ、今は能力でいつもの姿になっているけど。」
「…その、どうだった?男の姿になって。」
戸惑いがちに放たれた質問に、レイブンは少し唸る。
 鏡で男になった自分を見た時の記憶を探り、その時の印象を口にした。
「…胸が無くなっていて、ショックだったわ。」
「胸が?」
「ええ。ハンク、貴方はどう?」
質問を返され、今度はハンクが唸った。
「はっきり言って、ちょっぴり邪魔かな…でも、女の子は偉いよ。」
「え。」
「胸が膨らんでいても、機敏に動けるじゃないか。レイブン、君は凄いよ。」
自分では気付かない所を誉められ、レイブンは顔が熱くなった。
「あ、ありがとう。」
「ううん。でも、ショーンたち、いつまでやるんだろうね。チャールズとエリック、大丈夫かな…。」
ハンクはドアに目をやりながら、心配そうな表情を浮かべていた。



それから数時間後、チャールズたちは戻ってきたが、ショーンとアレックス以外の二人はぐったりとしていたため、真相は解明されないまま日にちが変わるのと同時に皆元に戻った。
チャールズとエリックは、もう二度とあんなことは起きて欲しくない、と呟いていた。










ついったでお世話になっておりますすーさんからお題を戴いたので、書かせていただきました!
性転換ですが、EC部屋に置いておかなくてもいいかな、と思い、通常部屋に置かせて貰いました。
すーさん、素敵なお題ありがとうございました!

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