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小説X
書き初めしましょう(X)

(題材が思い浮かばない…。)
真っ白な半紙とにらみ合いながら、スコットはうんうんと唸っていた。

正月、ということで、日本に倣い書き初めをしたいのだが、いざ書こうとすると何も思い浮かばない訳だ。

(新年の抱負も兼ねた文字にしたいんだけどな…。)

ため息をついていると、部屋のドアがノックされる。
入ってきたのはジーンだ。
「あら、書き初めかしら?」
「ああ。文字が一つも思い浮かばないけど。」
苦笑いを浮かべたスコットの紅い視界に、白だと思われるあるものが入る。
それは、ジーンの晴れ着に描かれていたもの―。

「兎…?」
「ええ、今年の干支よ。」

気付いてくれて嬉しいわ。と優しく微笑むジーン。彼女の着物にいる兎は跳ねている所だった。
スコットの頭に書くべき文字が浮かんできたのはその微笑みとほぼ同時だった。

「やっと思いついたよ!ジーン、見ててくれ!」

ジーンが少し前のめりになると、スコットはおもむろに筆を手に取り、素早くとも丁寧に文字を書いてみせた。
半紙に書かれた文字を、ジーンはゆっくりと読み上げる。

「"飛躍"…?」
「兎は跳ねるからね。ジーンのお陰だよ。」

ナイスチョイスだよ。と微笑み返すスコットに、ジーンはますます笑みを深める。
半紙の上では、力強い文字が窮屈そうに存在しており、今にも飛び上がりそうだった。

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