小説X
ハート・バレンタイン!
「ローガン、ハッピーバレンタイン!」
ローグとキティが差し出したのは、一つの大きな箱。
手にとってみれば、ふんわりと香るチョコレートの匂い。
どうやら、かなり大きさを持つチョコレートケーキを作ったらしい。
どうも、とお礼をして別室へ行き、机の上に置いた箱の蓋を開ける。
「…わ!?」
目にしたのは、思った以上の代物。
チョコレートケーキの上にはハート型の色とりどりのチョコレート。
しかも、大きさも厚さも各々違いがあり、中には装飾が施されたものも。
「…これは?」
首を傾げるローガンの耳にある声が届く。
「ああ、お前も貰ったのか。」
振り向けば、同じ大きさの箱を持ったスコットが。
どうやら彼も貰ったらしい。
「…随分、手の込んだもん作ったな。あいつら。」
「どうやら、上のハートは全校生徒各々が作ったものらしい。」
「!?」
ローガンが改めてケーキを見詰めると、スコットは話を続けた。
「因みに、スポンジの部分はジーンが、チョコレートを塗ったのはオロロだ。」
「役割分担か?」
「らしい。」
よくよく考えてみれば、この頃学園の女子達は自分達に黙って何やらこそこそとしていた。
(なるほど、これを作ろうとしたのか…。)
ローガンが一人納得していると、ああ、そういえば、とスコットは言葉をまた付け足す。
「こういったものを作ろうとした理由は、"貴方逹は学園の皆から愛されている"という事を表しているらしい。」
「え…。」
「そのケーキには皆の気持ちが篭っているんだ。」
理由を述べ終わると、スコットはスタスタと向こうへ行ってしまった。
残されたローガンはケーキの上のハート型のチョコレートを一つ摘み、口に入れた。
中々美味しい。
「…愛されている、か…。」
ポツリと呟き、また別のチョコレートを摘まんだ。
(だから俺、この学園が好きなんだろうな…。)
口には決して出せない思いを心の中に浮かべながら、ローガンは照れた様な笑顔でチョコの風味を楽しんだ。
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