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消失少女
微かな期待がつもる



見回りに来たって今日も何も起きやしねぇ
正直暇だ。考え事ばかりしてしまう。


「 “浮気” ねィ…。恋仲じゃあるめェし。」


そうだ。

俺と時雨は恋人同士なんかじゃない。

アイツは俺の気持ちを聞く前にこの世を去ったんだ。

あの時伝えたい事があるって言ってたけど
あいつが伝えたかったことなんてあいつが
いないこの世で知ることなんざ出来ねェ。


「あー、かったりぃ...。」


あの女といい土方の野郎といい気分が滅入ることばっかり言いやがって....

俺が何しようが勝手だろーが。



「は、離してください!!」

「ぁあん?オメェさんがぶつかってきたんだろ?」

「何度も謝ったじゃないですか!もう許してください!」

道脇を見ると女と当たり屋がもめていた。

なんでこんな時に限ってもめ事がおきるんだよ。


「謝って済むなら奉行所なんて必要ねぇんだよ。さぁ、どうしてくれるんだ?」

「兄貴にぶつかったんだ!慰謝料ぐらい
出せこのアマ!!」

「ひっ…い、慰謝料って……!怪我してないじゃない!」

「それ以上ガタガタ抜かしてたらお前を
売っぱらって金にしてやる!」

「いやっ!」

「はーい。そこまででさァ。」

「なんだテメェ…。」

相手が威嚇してきたがちっとも怖くねェ。
それどころか不細工で吐き気がする。

「慰謝料出せばボコボコにしていいんですかィ?丁度いいや、少しイライラしててねィ」


ドガッ…

こちらも威嚇がてらに当たり屋の横の壁を
足で蹴った


「ひ、ヒィッ………!」

「やだなぁ…今のはただの脅しですぜィ。
で、良いんですかィ?殴って。」

「チッ…覚えてろよ!!」


ありきたりなセリフを吐いて当たり屋は一目散に逃げていった。


「ダセーや。」

「あ、あの…。助けていただきありがとうございました。」

「別にただイライラして……ッッ!!」

また面倒になるのはごめんだと思いながら後ろを向くと

「…ど、どうかなさいましたか?」


着物と髪飾り髪型こそ全く違うが俺が助けた女は
声も顔も似ていて3年前に亡くなった


時雨に瓜二つだった。


「あの……。」

「い、いや……なんでもありやせん。
怪我は?」

「平気です。ありがとうございました。」

「時雨…?」

「え…?」

「お前…時雨なのか?」

「 ……。」


頼む…頷いてくれ……


「覚えて…ないんです…。何も……」

「じゃあどうして…?」

「逃げてきたんです真っ暗な場所から…。」

俯いて顔はよく見えないが声は震えていた。


「あっ…助けてくださってありがとうございました。これで失礼します。」

「待ちなせェ。」

「なんですか?」

「うちに…屯所に来な。」


この時俺は微かな期待を抱いていた。きっと
時雨が生きていたと。




少しだけ光が見えた気がした。

もしかしたら生きてたのかもしれない、と。


微かな期つも


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あきゅろす。
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