消失少女
片割れ逃す
ドガーーーン
『良い?今すぐこの混乱に乗じて逃げて!』
「で、でもお姉ちゃんは?」
『私はいいから!こっちを向いて!』
「い、痛いよお姉ちゃん!」
『大丈夫だから…ね?それと、もし私を見かけてもお姉ちゃんって呼ばないで。』
「なんで…?」
『あなたと私が仲間だってわかったらあなたは狙われるからよ。私が声をかけても“籠狗夜” って呼ぶの。約束よ。』
「お姉ちゃん……わかったよ…籠狗夜。」
『さぁ、この風呂敷を持って。ここから二里離れたら川があるからそこで煤を取りなさいそして私があげた薬を飲んで着物を着て町娘に扮するのよ!』
「グスッ…わかった。」
『良い子ね…ごめんね……浅葱。あなたの髪を切ってしまって…。』
「ううん、大丈夫。」
『元気でやるのよ。』
籠狗夜は力一杯に私を抱きしめてから炎の中研究室へ戻って行ってしまった。
足止めするために。
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「私は籠狗夜の…時雨さんの努力を無駄にしないため川まで走って言われた通りにやりました。」
「…薬を飲んだ後、眠ってしまって目を覚ましたら朝でした。そこが歌舞伎町。」
「その薬ってのは…」
「記憶を無くすもの、と言うより記憶を変える物だったそうです。効果は一時的なものでしたが。」
「じゃあその研究所から逃げたってのも…」
「最初は私自身も人売りから逃げ出したのだと思っていました。でも屯所で過ごしてるう記憶が戻ったんです。」
「そうか…。」
「お願いです。時雨さんを助けてください。作りモノで偽物の私を本物の妹の様に可愛がってくれたんです。」
「偽物とか言うんじゃねェ…お前は何も悪くねェんだ。浅葱も時雨も両方助けまさァ。」
「今はもう一刻も争う状態です。時雨さんは何度も記憶を戻そうとしています。鷹虎がいつそれに手を加えるかわかりません。ヤツは欲しい物は無理にでも奪い取る人間です。早くしないと時雨さんの心が…恐らく…壊れます。」
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