消失少女
完でいいのか?
『何年振りかな…こうしてまた朝焼けが見れるなんて。当たり前だと思っていたことがこんなにも…。』
空を眺める時雨はとても儚かった。
まるで雪みたいに溶けていなくなってしまいそうなほど。
「時雨…!」
『え?』
ギュッ
また時雨が消えてしまうのが怖くて俺はその場に留まらせるかのように力一杯抱きしめた。
『い、痛いよ…総悟。』
「しばらく黙ってろ…。」
時雨は何も言わずに総悟が落ち着くのを待った。
『…総悟…ごめんね……。』
「…なにがでさァ?」
『いろんなこと。待たせてごめんね、嘘ついてごめんね、傷つけて…「もう…いいんでィ…時雨……オメェが戻ってきて…本当に、よかったでさァ…」
それからしばらくお互いに黙って朝焼けの方を眺めていた。
しかし。
『…ッッッ!!』
突然の激痛に時雨はその場にしゃがんだ。
「時雨?どうしたんでィ?」
『さっきまで痛くなかったのに…ウッ。』
「痛み止めの効き目がなくなったんだろィ。それに無理して屋上まで行くからでィ。」
『ご、ごめんなさい。』
総悟はため息をつくと前にかがんだ。
『ちょっ!総悟!!下ろして!』
時雨をひょいと持ち上げ横抱きした。
「心配かけた罰でィ…何度俺を心配させれば済むんでィ。」
『そ、それは悪いと思うわ!でもこれは別よ!』
「軽すぎる。3年間何食べてたんでィ」
『そういう総悟も3年前より痩せてるよ。ちゃんと食べてたの?』
「少なくとも時雨よりは食べてまさァ。」
『本当?』
「ああ、確かめればいいぜィ。…また元気になって屯所でねィ。」
『うん…そうだね。』
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