消失少女
副長の思ひ出
「瞳孔ガン開きマヨラー。」
初対面は最悪だった。
副長と思ひ出
「あァ??」
『いえ、副長と剣を合わせる際は挨拶代わりにこの言葉を言えとあそこにいる隊長さんが言っていたので…。』
隊長さんだァ?と思って指の刺された方を見るとまるで誤魔化すように口笛を吹きながら他の相手と手合わせをやっている総悟が見えた。
「…あのヤロッ!!」
『あの、手合わせ願いたいのですが。』
「チッ…てかオメェもアイツが言ったことを真面目にやるな。」
『いえ、鬼の副長と恐れられる貴方がどういう反応をするのか楽しみで半分わざとやりました。』
つくづく総悟に似ていた。
『で、手合わせ。』
「あ?」
『だから手合わせをと何度も言ってるんですが瞳孔ガン開きマヨラーさん。』
「テメェ…手加減しねぇぞ。後で泣いたって承知しねーからな。」
『わかりましたー。』
あとあと後悔したのは勢いのまま冷静さを少々失い試合をした俺だった。
スパーーン!!
「…い、一本!」
『やたっ!』
「「「おおー!」」」
試合となると最初のふざけた雰囲気もなく殺気立った女が竹刀を持って目の前に立っていた。
そして始まった瞬間、殺気を全開にし俺に
襲いかかって来た。
で、今俺は一本取られてしまった。
「すげぇ…。副長を一瞬で。」
正直悔しい気もしたがそれを認めたくはなかった。
「チッ……」
「おう!トシ!どうだ新しい子は?」
向こうから近藤さんが手を振りながらやってきた。たしかあの態度の悪い生意気なやつを隊士に推薦したのは近藤さんだった筈。
「ああ……何モンなんだ?あの女。」
「あれ?言ってなかったっけ?時雨は俺の遠い親戚だよ?親が同じく相模で道場やってたんだ。」
「は?聞いてねぇよ!!近藤さんそう言うことはもっと早くに言えよ!」
「いやー、言ったつもりでいたよ。すまん
すまん。」
「土方さんもまだまだですねィ。いつも女、女って馬鹿にしてた天罰でさァ。」
「オメェにだけは言われたくねぇよ。」
『勲兄ィ!』
「おー時雨!どうだったトシとの手合わせ。」
『もう一回やりたい!だってあれ本気じゃないでしょう。』
ニコニコとこちらを向いて聞いてきたが嫌味にしか聞こえねェ
「どっちにしたって土方さんは時雨には勝てねェと思いやすぜ。」
「黙ってりゃボロクソ言いやがって……」
「ありゃ本当のことじゃねェですかィ。」
「テメェら…刀抜けェェエエ!」
それから道場はチャンバラ大会の会場と化し
隊士総出の打ち合いになった。
あの後は時雨、総悟、俺の3人で仲良く近藤さんに説教くらった。
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ーーーーー
「 3年、か…。今思えばあいつも最初とだいぶ変わったよな。」
まったく嫌な思い出だぜ。
「ふぅーーっ。」
なぜだか煙草がいつもより苦く感じた。
副長の思ひ出は紫煙と共にゆらゆらと。
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