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現在編
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『…忘れ物は…、無しっと。』

今日の持ち物を確認して玄関へ向かった。

『じゃっ行ってきまーす。』

誰もいない部屋に向かって言う挨拶は寂しいけれどもう何年もそうだからとっくに慣れてしまった。



入学説明会などで既に何度か道を歩いているので迷うことなく進んで行った。


「ニャァ〜。」

『おやや?』

時間に余裕もあるのであたりを見回すと木の上で震えて枝にしがみついている猫がいた。

『降りれなくなっちゃったの??』

「ニャーン」

『あらあら…。じゃおいで〜。』

猫ちゃんは怖がらずにじっと私が抱っこするのを待っていた。

「ニャアー」

『よかったねー!これで降り…。』

ーードクンッ

『あ、れ?』

頭が痛い…

ズキズキと痛んで目眩がした。


え…?

「なんで僕を起こしてくれなかったんだ!」

『ご、ごめんなさいコロナ。あまりにも気持ちよさそうに寝ていたものだから…』




「ソレイユは僕の大事なプリンセスなんだもの。寂しいのに気づかない訳ないじゃないか。」




「君がそれを望むのなら構わないよ。僕の幸せはソレイユの幸せでもあるから。」

『随分ギザなセリフをいう相棒さんね。』

「うるさいうるさい!!」



な、何…?

「ニャアー…」

気づいたら私は座り込んでしまっていて。猫ちゃんが私の頬を舐めていた。

『あ…平気…。平気よ。』

半ば自分に言い聞かせるようにして深呼吸をした。

『あ!やばい!!遅れちゃう!それじゃあね。』


コロナ…。あの子かもしれないと思ったけど…私はもう太陽のプリンセス、ソレイユじゃない。日向井杏樹だ。



それにあの猫ちゃんにはコロナにあったはずの



額の太陽のマークがなかった。




「……泣いてた。僕のこと忘れてた訳じゃ無いのかな?」

喋るはずのない猫ちゃんが呟いた言葉は春風に乗って消えた。



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