「ぴぎゃあっ!」 この状況をどうしようかと考える暇もなく、土方さん(トッシー)は沖田さんによって風呂場に放り込まれた。 打ち所が悪かったのか、土方さんは目に涙を溜めながら頭を摩る。 やっぱり…、キャワユイ! って萌える前にバスタオルバスタオル…!!こんな貧相な身体、いくらトッシーといえ見せる訳にはいかない。 「名前〜」 そんな折、お風呂場に響いた沖田さんの声に土方さんと私は小さな悲鳴を上げる。 『お、おおお沖田さん!これは一体どういうことですか!?』 「俺からのささやかなプレゼントでさァ」 『どんなプレゼント!?てかここ何処か分かってるんですか、お風呂ですよ!』 「…………はっ!」 『なんですか今気付きましたみたいなそのリアクション』 「ま、妊娠したら真っ先に俺に言いなせぇ。土方の退職金でもやるから。あばよッ!!」 『ちょっと待ってー!!』 ◆ ◆ 沖田さんが居なくなって大分時間が経った。 タオルを巻いているとはいえやはり恥ずかしい私は、土方さんから死角になる場所で身を潜めていた。 そりゃあ脱出しようと試みたよ。でも外から鍵をかけられている為ドアはびくともしない。 土方さんは土方さんで「名前たんの入浴シーン」やら「エロゲー的展開」やらワイワイガヤガヤ一人でテンパってるし。 沖田さんめ…。 土下座しますから許してくださァァァい!! 「名前たん…?」 やっと私の姿が見えないことに気付いたのか、土方さんのか細い声がお風呂場にこだました。 土方さんすんません。応答したいのはやまやまなんですが、…今は無理です。出来るなら誰かの助けが来るまで大人しくしててください私を捜さないでください。 しかしそんな願いは叶わず、私はあっさり土方さんに見つかってしまった。(そりゃそうだよね。お風呂場だもん) 「…名前たん」 いかにも破廉恥なものを見てしまった乙女のように赤くなった顔を手の平で隠す土方さんにつられ、私の頬も紅潮していく。 な、なんだこの雰囲気!!やめやめやめーい!! 『くしゅんっ』 頬がどんどん紅潮する中で、私の口からくしゃみがひとつ零れた。どうやらお風呂場の通気孔から入ってくる隙間風で身体が冷えたらしい。 「だ、大丈夫でござるか?」 さっきまでの乙女モードはどこへやら、オドオドしながらもあの鬼の土方さんがそう自分に声をかけてくれたことに自然と頬が緩む。 『あぁ、これくらい大丈夫ですよ!いつも沖田さんの何かしらのプレイで慣れてるんで』 「で、でも…」 本当に心配してくれているのか、土方さんの眉がしょんぼりと下がる。 私…、今ならご飯10杯いけそう。 まあそれは冗談として置いといてだ。ふと思えばどんなに雨に濡れようと、どんなに池に落とされようと、沖田さんのおかげで風邪を引かなくなった私だが、今の状況はかなりヤバイかもしれない。身体が冷え切って身動きがとれないのだ。土方さんに大丈夫とは言ったが、今まで受けてきた拷問の中で一番地獄かも…。 「名前たん、これ…!」 『へ?』 今にも涙が零れ出そうな目を擦りながら目線を前にやると、見慣れた隊服が私に差し出されていた。 『土方さんこれ……ってうわっ!』 いきなり土方さんが私の前にしゃがみ込み、私は条件反射でぎゅっと目を閉じる。瞬間、嗅ぎ馴れた煙草の匂いが鼻を擽り、何事かとそっと目を開けると、私の肩に土方さんの隊服が掛けられていた。 「拙者、今はこんなことしか出来ないでござる。名前たんにはいろいろ迷惑かけて、本当に申し訳ない」 『土方さん…』 「でも、こういうピンチの時は正義のヒーローが助けに来てくれるでござる! それまで、僕がずっと名前たんの側にいるから」 へらりと笑う土方さんの愛らしい顔を見ると、本当に正義のヒーローが助けに来てくれそうな気がして不思議と安心した。 そうだよね、ヒーローは必ず助けに来てくれるもんね。 だから、 今だけはあなたの側で眠らせて END 20091006 |