うわー、今すんごい極楽。体中ぽかぽかで暖かいよ。毛布と肌が触れ合う感触って超最高だね!……へーっくしゅん!!
『んあ、…アレ?』
自分の盛大なくしゃみと共に、パチリと目が開いた。…あれ、ここはどこ私は誰。もしかして私悪の大王に連れ去られちゃったのかしら、ってここ思いっきり私の部屋じゃーん。
…………ていうかちょっと待てちょっと待て。私ったらなんで自分の部屋で悠長に寝てんの?昨日は確か土方さんとお風呂場で、
え、お風呂場で……?
『ギャアアアアアア!!』
まるで悪夢を見たかのように、ガバリと勢いよく起き上がる。心なしか呼吸すら困難になってきたぞコルァ…!ていうかコレ、"まるで悪夢"ってよりもリアルに悪夢だよね。だって昨日はお風呂場で…ギャアアアア!…もう頭真っ白、なにも考えたくないよママー。
「どうした!?」
『ギャアアアア…!!』
起きたばかりだというのに、私の口から悲鳴が途絶えることはない。さっきまで真っ白だった脳内も、アドレナリンとやらでお祭り騒ぎだ。
いきなり聞こえたドスのきいた声に、身体を震わせながら障子の方に目をやる。そこには血相変えて立ち尽くす土方さんの姿があり、驚きが何十にも重なった私の身体や脳はもうショート寸前。いや、もうなにがなんだかわからない。
『な、ななな!どうしたんですか!?』
「いや、なにってお前さっき叫んでたじゃねぇか」
『…そんなことでわざわざ?』
「わざわざってなぁお前…。隣の部屋から悲鳴聞こえたら驚きもするだろーが。それに昨日の今日…………」
土方さんの言葉が途中で途絶える。うん、土方さん。とりあえず…とっても恥ずかしいよね今!死にたいよね今!
でもね土方さん、私はそれ以上に悔やみ悲しみ恥ずかしいのだよ。だって土方さん、トッシーから戻ってるじゃん!ってことはさぁ、昨日の記憶ないじゃん。それに比べて私は……ってアレ?ちょっと待てよ。なんで記憶の無い土方さんが昨日のこと知ってるんだ?それに私達って閉じ込められてたんだよね?
『あの〜、土方さん。恥ずかしさと葛藤中大変申し訳ないんですけど、一ついいですか』
「…なんだ」
『私達って誰に助けられたんですか?』
この際だから直球ストレートに聞いてみた。真実がどうであれ昨日(過去)はどう足掻こうと消すことは出来ない。恥ずかしいけど、こうなったら当たって砕けろだ!
土方さんもそれを悟ったのか、ため息を一つ吐いて小さく口を開いた。
「助けたっつーか、お前を風呂場からここまで連れてきたのは俺だ」
『まじでか。…てかえ、もしかしてあの格好のまま!?』
「それは女中に頼んで着替えさせた」
お、終わった……。名字名前の人生終わった。服の着替えはともかく土方さんにまで貧相な身体見られた…。沖田さんのバカー!バカバカバカー!どこまで私を苦しめたら気が済むんだ!
…まぁ、土方さんが好きってこと沖田さんにバレた時点で私の人生とか終わりだよね。ハハ、ハハハハハ。
「おい、どうした俯いて。気分でも悪ぃのか?」
『………チーン』
「なんだよそれ。…まぁ、その、すまなかったな。どうせ総悟の仕業だろ?アイツには強く言っておく」
『…土方さんは悪くないです。悪いのは沖田さんです!沖田コロス!』
「…お前も一応可愛いこと言えるんだな」
『は?なんのことですか』
「いや、こっちの話しだ。それより名前、今から飯でも食いに行くか。お前朝飯食ってねぇだろ」
隊服のポケットから煙草を取り出しながらフッと笑う土方さんに見とれ、恥ずかしさなど忘れ首を縦に振ってしまった。まさかこんな時に土方さんからお食事の誘いがあるなんて!神様私を見捨てなかったのね!そんなの勿論…!
ハイ、よろこんで!
『やったー!焼肉!』
「誰が焼肉だァ?ふざけんな」
『…やったー!ローストビーフ』
「肉から離れろ。つーかお前単純だな。総悟殺すんじゃなかったのか?」
『それとこれは別です』
END
20100211
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いつも可愛くないヒロインから庇ってもらえて内心嬉しい土方。
てか超久しぶりの更新。
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