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たまごなおはなし
『夢という名の背中』
俺達は空を見上げていた。

いつもそこに在って、背伸びをして思い切り手を伸ばせば届きそうだと思えるのに、決して届くことのない空を、ただじっと見上げていた。







顔を上げてみることなんて久しくなかったのに、行き交う人の波の中で、足元しか見ていない視線を空へと放ちたくて、そう、飛びたくなったのかもしれない。けれど、迎え入れてくれそうにない空に、悔しいけれどキレイだねと素直に思っていたんだ。水色が本当にキレイで、水色の向こうに無限に広がる空間に、俺達もちゃんと包まれているかと思うと、そこに辿り着きたいと、夢に辿り着きたいと本気で駆け出した。







どれ程の夢を追いかけて、どれ程の夢を諦めたかなんて、それは今、悔いることじゃないって仲間が導いてくれた。そしていつの間にか 「夢にときめけ!」 が合言葉になって、それが何かひとつの形になっていく足跡。







ずっと苦しかった。

俺達は今まで挫折と言う場所にいて、やりたいことを諦めて、グランドに転がるボールに溜め息をついて、「そう言やぁ、俺も野球やってたな。」なんて、まるで過去のことの様に呟いてた。本当は、本当は、心の中にまだ燃える何かがあって、指先が、この拳が、全てを忘れてはいなかった。







もう夢を諦めてたのに、先に夢に向って歩みだしたあいつらが俺を引きずり出してくれて、「また夢を追いかけよう。」と背中を押す。俺、夢を諦めなくてもいいのか?足の底から全身に駆け巡る血潮、沸き立つ希望。








「夢は追いかける為にあるんだ。逃げる夢を追いかけてみようじゃないか!」誰かの言葉、何故か妙に納得できた。荒くれてた俺達を救い上げて、逃げる夢を追いかける面白さを教えてくれたアイツ。「明日にきらめけ!」なんて、クサイ科白を言うけれど、託してみたいと、仲間と同じ夢を追いかけたいと心から思ったんだ。







俺達のこの後ろに残る道には、こいつらと出会えた奇跡とアイツと歩んだ軌跡がくっきりと残されてる。




ほら、見ろよ、色んな足跡が見えるな。夢に向かって走り出した俺達の進む先には幾つもの扉があって、刹那の挫折を何度も味わったけれど、くじけている暇はなかった。夢は待ってちゃくれないからだ。逃げる夢を、俺達は追いかけ続けて、今、此処に立つ。







「俺達、やっとここまで来たな。」


握り締めたボールを見つめて俺が言う。








「おう、来たな。」

「夢みてぇーだな。」
「夢じゃにゃいにゃー。」
震えてるくせに、いつものように明るい声でみんなのムードを高めてくれる。





「あったぼーよ。俺達が掴み取ったんだからな。」
「俺、みんなと来れて嬉しいよ。」


まだ試合が始まったわけでもねぇーのに、早速涙ぐみキャプテン。大丈夫か?とみんなが笑い飛ばす。




「何泣いてんだよ、まだ早ぇーんだよ。」


「そうだー!泣くのはまだ早い!お前らが描いた夢の場所だ!さ、行ってこーい!」


こいつのお陰で、捨て去ろうとしてた夢が鮮やかに輝きだして、駆け抜けて行った日々に勇気を貰って、俺達は逃げていた夢に挑む。




夢に、自分達の描いた大きな夢に。今、挑戦状を叩きつけてやるんだ!




「ゴー!ニコガク、ゴー!」













今、夢に辿り着こうとしている俺達の背中に、何が見える?







俺達には、勝利とか、負けるとか、そんなものは何も見えない。ただ見えるのは、遥か遠くに光る「夢」と言う名の自分達の背中だ。





2009/4/24作


コメント: これは、ROOKEIS の劇場版を ひたすら母ちゃんの妄想を繰り広げただけのお話しです。

テーマは「青春」なんですが、その感じはでてますかね?
そして、随所に”GReeeeN”の曲のタイトルやらを入れておりまぷ。


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あきゅろす。
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