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たまごなおはなし
ボクらが泣く理由
今日ケンカしてん。ホンマしょうもないことで、親友とケンカしてん。でも、ボクは悪くないねん。アイツが悪いんや。せやのに、なんでこんなに気分がモヤモヤするんやろう。
「もう、何イライラしてんのこの子は。」
「イライラしてへん!。」
「お兄ちゃんなぁ、今日よっさんとケンカしてんで〜。せやから、きげん悪いねん。」
「うるさい!お前はだまっとけ!」
「なんやただのケンカかいな。ほな、はよ仲直りしぃや。」
「いやや。ボク悪くないもん。」
「何言うてんの。ケンカ言うても、どうせしょうもないことやろ?」
「ちゃうわ。お母ちゃんに分かるか!」
「分かるわけないやろ?お母ちゃんがケンカしてんちゃうんもん。」
もうお母ちゃんと話してたら、よけいに腹立ってきたわ。よっさんとは絶交や。
その日の晩ご飯は、ボクの大好物のハンバーグやったけど、いつもと味が違った。
「お母ちゃん、お兄ちゃん泣きながら食べてんで〜。アホみたい。」
妹の言い方も腹立つけど、涙が勝手に出てくるのも腹立つねん。何で泣いてんねん。泣きながら食べたハンバーグ。泣きながら怒ってる。お風呂んときも勝手に泣けてくるねん。止まれへんねん。なんで?
風呂上りのジュースを飲んでたら、また妹がちょっかいだしてきた。
「あ〜、お兄ちゃん目ぇ真っ赤やで。また、泣いてたんちゃうん?泣き虫〜。」
「こら、お兄ちゃんいじめてどうすんの!早よ風呂入りなさい。」
お母ちゃんが止めてくれへんかったらどついてたわ。
「なぁ。泣くほどケンカしたこと後悔してるんやったら謝りや。」
「男はそう簡単に謝れへんねん。」
「アホ。親友やろ。大事な友達ちゃうんか?」
なんも返事せんと布団に入った。目ぇ閉じてもよっさんが見えてくるねん。目ぇ開けても、よっさんの笑ってる顔が見えるねん。ボクはずっと布団の中で泣いてん。拭いても拭いても涙が出てくるから、全然寝られへんかった。
「おはよう。やっぱり寝られへんかったんやな。今日、ごめんって言うんやで。」
「・・・・・」
「あんな、ケンカするな。とは言わへん。けどな、親友は失くさん方がええで。」
「・・・・・」
学校に行く道がこんなに遠いと思わんかったな。ランドセルもやけに重い。
ゆっくり、ゆっくり歩いてたら、前によっさんがおった。
電柱に持たれて、誰かを待ってるみたいや。・・・ボクを待ってるんか?でも、よう顔を上げれんかった。知らんぷりして行こうと思った。よっさんの前を通りすぎようとした時にお母ちゃんの声が聞こえた。
『ごめん。って言うんやで。』って耳の奥で聞こえた。
ボクはちょっとだけ顔をあげた。そしたら、目が赤いよっさんがボクを見てた。よっさんも泣いてたんか?ボクと一緒か?
「よっさん、昨日はごめん。」
よっさんの顔を見たら、口から勝手に言葉がでてた。
「ボクもごめん。ボクが悪かった。ごめん。」
二人とも真っ赤な目ぇやったから、何か笑えてきて、二人で思いっきり笑ってん。さっきまでのイヤ気分がすっきりした。なんか少しだけやけどな、大人になった感じがするねん。
なぁ、ボクな、ちょっと分かった気がするわ。大人って、あんまり泣けへんやんか。それは大人やからやと思うねん。子供が泣くのは、多分、多分やで、大人になるためやと思う。
腹立って泣いて、怖くて泣いて、悲しくて泣いて、そうやって何回も泣いて少しずつ大人になっていくんとちゃうかな?
子供が泣くのって、もしかしたら、大人になる準備なんとちゃうんかな?


《コメント》
子供は沢山泣いてええと思う。だから、「もう泣きな!」とか「何時まで泣いてるんや!」って言うたら、アカンのちゃうかな?って思ってます。
ホンマ、大人になったら泣いてばっかりはおられへんしね。
子供のうちにしょうもないことで泣いときなさいよ。


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あきゅろす。
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