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たまごなおはなし
結婚物語  その参
そんなモヤモヤした思いを抱えながら1年が過ぎた俺の誕生日に、彼女がプレゼントをくれたんだ。そのプレゼントと一緒に、俺の両親への贈り物も。
「あなたが生まれてきて、私とあなたが出会えたのは凄い奇跡だと思うのね。その奇跡はあなたのご両親が運んでくれたのよ。その感謝の気持ちを伝えたくて。」
こんな風に感じてくれてるのに俺はどうして言ってやれない。何も言わないけれど、彼女は俺からの言葉を待っている。きっとあの日からずっと待っている。なのに俺は・・・
「ありがと。今度実家に行くからさ、ちゃんと渡すよ。喜ぶだろうな。」
何言ってんだ。そんな言葉を返したいわけじゃないのに、ホント俺って情けない男だ。でも、誓う。もう一度結婚するなら、俺は迷わず彼女を選ぶ。彼女じゃなきゃダメだ。心の中では答えが出てたのに、言葉にはできなかった。すると彼女が俺の正面に立って、
「私、待てないんじゃないの。焦ってもいないの。ただね、ずっと思ってたの。」
その言葉の後に、


仕事で疲れて帰ってきて、一人住まいの家を開ける鍵に、私はなれませんか?

お帰り。って、笑顔であなたを迎える家に、私はなれませんか?

あなたが、ほっと安らぐ部屋に、私はなれませんか?

あなたの心が辛い時、本気で泣ける場所に、私はなれませんか?


俺を真っ直ぐに見て、今まで見たことのない笑顔で彼女は言ったんだ。彼女の心の中は涙で溢れて溺れそうになっているはずなのに、笑顔でね、ゆっくりと俺に言うんだ。その科白を自分の体の隅々までスーッと染み込ませてみたら、なんて言うか、綺麗な言葉と優しい声にさ、俺は、ああ、この人と同じ家に帰りたいって思ったんだ。この人と一緒に泣けたら俺は、俺のままでいられるってはっきり分かったんだ。
結婚に一度失敗して、結婚に嫌気が差して臆病になってた俺に、彼女が問いかけてくれた言葉は凄く暖かくて、俺は彼女の精一杯のプロポーズを受け取ったんだ。



2008/12/2 作

では、次は最終話です。  どーぞお読みくださいね

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あきゅろす。
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