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たまごなおはなし
結婚物語  その壱
不景気なこの時期に、残業もなくこんな時間に一人暮らしの家に帰るのがいやで、呑みに行きませんかと先輩を誘ってみた。先輩は入社当時から俺を可愛がってくれていて、頼りがいのある人で、俺は何かと影響を受けている。
駅近くのおでんの屋台で、肩を並べておでんをつまみに熱燗をいただいた。少しすると気が抜けてきて、俺は愚痴を言い始めてしまった。
「先輩、年頃の女って厄介っすね。何かにつけて結婚を意識しだして。」
「何だ?彼女と上手くいってないのか?」
「違うんすよ。仲はいいんっす。けどね・・・・」

俺は、近頃の彼女のことを話した。友達の結婚式に出席する時は迎えに来なくていいとか、芸能人の結婚話しを昔は騒いでたのに今は変に避けているから、遠まわしに結婚したいと訴えてるようで重荷に感じてきていることと、まだまだ若輩者で、給料もたいしたことないのに結婚なんて考えられないとも話した。
すると先輩は、
「お前の心境、少しだけ分かるよ。俺だって、一回目の結婚の時は怖気づいたもんだ。お前が言うように、結婚に変に敏感になってたアイツの気持ちが重いって感じたさ。」
「それなのに、結婚したんですか?」
「まぁ、好きだったし、アイツが喜んでくれるならって。」
コップに少し残った冷めたお酒をぐいっと飲み干してから先輩は、ぽつりと
「でも、ダメだった。もしかしたら初めからダメだったのかもな。」
俺は何も言わなかった。何て言えばいいのか分からなかったし、触れる話しでもないから、オヤジに酒のおかわりとおでんを追加を言った。
「離婚するのは勇気がいったぞ。はっきり言って仕事より厳しかったしな。離婚して二年くらいたった頃かな?お前らが合コンに誘ってくれて、俺は今の嫁さんと出会えたんだよなぁ。彼女なんていらないと思ってた俺にさ、あんな出会いがあったって奇跡だよな。ありがとな。」
「何言ってんすか先輩。もう酔ってます?」
「俺、今更だけどな、ホント感謝してんだぞ。恥しいから一回しか言わないからちゃんと聞けよ。」
先輩は、奥さんとの話しを始めたんだ。俺は熱燗を呑みながら静かにその話しに耳を傾けた。




2008/12/2 作

4話になってます。続きをどーぞ。


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