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テニスの王子様
拾得物


「あれ……?」

香澄は、家に帰った後鞄を開けて中味を出す時に違和感を覚えた。
何かが足りない。
教科書もノートもある。
メモリもなくしてはいない。
必死に今日の授業やクラスメートとのやりとりを思い出した。

「あ、古文のテスト……。」

四折りにしたテスト用紙が見当たらない。
帰りにコンビニへ寄って財布を出す時に一度鞄を開けている。
その時に落としたかもしれない。
そう思い、香澄は自転車にまたがってコンビニへ向かった。





しかし、コンビニにそれらしきモノは届いていないという。
香澄はもう一度帰り道のことを思い出した。

「あ〜、困ったなぁ…。結構すごい点数だから見られると恥ずかしいよねぇ…。」

しかも氏名が記載されているテストなので、個人情報も関わってくる。
視線を落としてどこかに落ちていないかとキョロキョロしていた。

「何処で落としたんだろう……。」

「あれ?秋山さん?」

聴き憶えのある声に顔をあげると、そこには優しい微笑みを浮かべた不二が立っていた。

「あ、不二先輩…。」

「丁度良かった。はい、これ。」

不二は徐(おもむろ)に鞄から一枚の髪を取り出した。
それは紛れもなく香澄が探していた古文の答案用紙だった。

「あ、これ……!」

「生徒玄関の入口に落ちていたよ。申し訳ないけど、中は見せてもらったよ。」

「あう…。でも良かったです。探していたので…。」

「フフ、古典は苦手かな?」

「ぅう…はい…。同じ日本人なのに言葉の意味がさっぱり解らなくて……。異国って感じです。だけど英語は好きなんです(^^)」

典型的な文系の香澄は出来の良いものと悪いものの差が激しい。
自分の興味の度合いに比例して。

「へぇ…。英語だって異国の言葉なのにね。」

「んー、英語は世界共通ですから、必要になるかなってだけで……。」

「…あぁ、手品で海外に行くの?」

「あは、そこまで具体的ではないです。ただ、知っていた方が、身につけた方がいいスキルは吸収しようと思いますけど…。」

香澄は、モゴモゴと語尾が小さくなっていた。
あまり将来のことを考えていないようで恥ずかしかったからだ。
高校に入っても展望が見えない。
そんな少しの焦り。
夢に向かって進むヒト、夢がなくてもがくヒト、夢を見ているけど迷っているヒト……。
悩みも迷いもヒトそれぞれだけど、香澄はなんとなく、結論を先伸ばしにしていた。
やりたいことだけやって生活出来ないことはいくら何でも理解している。
だけど自分を偽ることも出来ない。

そんな不器用な自分が時々嫌になる。

翳(かげ)りのさした香澄を不二は黙って見ていた。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

思春期の悩み。
アイデンティティー…まではいかないかな?

ちなみに、香澄さんの古典のテストの点数は赤点ギリギリです(笑)
私の通ってた学校は平均点の半分以下が赤点でした…。


2009*6*25

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あきゅろす。
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