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テニスの王子様
これもマネージャーの仕事です


不動峰から戻って救急箱を整理していた時だった。

「あ。」

「何だ?」
「どうした?」

あまり意識して無かったとはいえ、私そんなに大きな声出した覚えないんだけど…。
次々と部員が寄ってくる。

「救急箱がどないしたんや?」

「あ、いえ、そろそろテーピング切れるなって。あとアイシングスプレーも3本しかないので…。」

「買い出しに行きゃいいだろが。」

「そうですね。丁度明日オフだから行ってきます。」

「待て、まさかお前またひとりで行く気か?」

「へ?そのつもりですけど?」

「「「「駄目だ(です)!」」」」
「あかん!」

「な、何なんですか!さっきから私のこと子ども扱いして!」

「子どもじゃないから困るんじゃねぇか!」

はぁ?
子どもじゃないから困るって文脈おかしくない?!

「たかがお使いじゃないですか。何そんなにムキになってるんですか?」

「とにかく、明日は俺様も一緒に行ってやる。」

「「「「「「「はぁ?!」」」」」」」

「冗談じゃ」
「跡部!抜け駆けは許さんで!」
「そうですよ。何で香澄さんと一緒に行くのが跡部さんなんですか。」
「アーン?俺様が部長だからだろうが。部費の管理をするのは当たり前だろう。」
「職権乱用じゃねーか!」

「いやそういうことで無く」
「大体、跡部に任せたら部費が足りねえ!」
「ここは俺が行く!」
「俺だって行きてえよ!」

私の意見そっちのけで部員達はぎゃいぎゃいと口論している。

「……、五月蝿い!!」

急にブチ切れた私を見て部員達は唖然としている。

「大体ですね!オフっていうのは普段酷使している身体を休める日のことでしょう?!こういう雑用なんてしてる暇あったら休んでください!!」

「だがな…。」

「言い訳なんて聴きません!とにかく、明日は私ひとりで行きますからみんな付いてきちゃ駄目です!!もし付いてきて休んで無かったら乾汁飲ませますからね!!」

部員の顔がギクリとして青冷めた。
最近私、この人達の扱い方解ってきた気がする。

「それじゃ、お先に失礼します。」

不満たらたらな顔をした部員達を他所に私は帰路についた。










次の日の放課後、私は足りない物品をメモに書き出し街へ向かった。

「え〜っと、○×スポーツがここの角を曲がって…。」

やっぱりまだ慣れない道だから地図を片手に散策中になってしまう。
あちこち行くのは楽しいから好きだけど(笑)。
部員たちも流石にあれだけ釘を刺してきたから今日は大人しいものだった。
同じクラスの鳳君でさえ何も言って来なかったもんね。
次々と店に入り、必要なモノを買い揃えてまた次の店へ。
途中可愛いショップを見つけて時間ロスしたから買物が終わる頃には薄暗くなってきていた。

「買い忘れは無いし…、よし、学校戻ろ。」

時計を見ながら私は踵を返した。

「きゃっ…?!」
「うわっ…!」

振り返った途端に誰かとぶつかった。

「キミ、大丈夫?」

「あ、はい…。」

ふと見上げればオレンジ色の髪で白い学ランを着たヒトが立っていた。

「お♪可愛い子発見〜。ねね、俺とお茶しない?」

…。
……引くわぁ。
ドン引きだよ。
何、この軟派男。
黙ってればかっこいいのに口を開いたら三枚目じゃん。

「私、急いでるんで失礼します。」

「え〜、少しだけだからさ。荷物重そうだね、持ってあげようか?」

ヒトの話訊けよ!
何でこう、都会の奴は話訊かないんだよ!

「結構で」
「間に合ってるから、お前なんてお呼びじゃねぇよ、アン?」

両腕が急に軽くなったかと思いきや、持っていた荷物を樺地君と鳳君に取られた。

「え?え?」

状況が把握出来ないまま私は辺りを見回せばいつもの顔ぶれがいる。

「うちのマネに声かけるなんて覚悟できてるんだろうな、千石、アン?」

「ええっ?!氷帝っていつからマネとったの?!」

「つい最近だC〜。」

「そんなの知る訳無いじゃん!」

口論はしているものの、このオレンジ頭のヒト、「千石」さんというらしい。
しかもみんなとお知り合いのようだ。

「ちぇ、何だよ〜。」

「いいから寄るんじゃねぇよ。」

「いいじゃん、話すくらい…ねぇ?ええと…?」

「ぁ、私は」
「山田花子だ。」

「違います!秋山香澄です。」

「香澄ちゃんっていうんだ♪俺千石清純。“せいじゅん”って書くんだよ。」

清純(せいじゅん)…。
親御さん、可哀想だな…。

「え?何?この可哀想な雰囲気?!」

「大方名前が体(たい)を表して無いからやろな。」

「ええ!酷い!」

何か、コントみたい。
本人達は至って真面目だから尚更可笑しい。
自然と顔が綻んだ。

「何笑ってんだよ。」

「だって…、ぷはっ、可笑しくて…!」

堪えきれずに私はお腹を抱えて笑った。
流石に街中で大声を出して笑おうとは思わないからかなり息が苦しい。

「お、おい、大丈夫か?」

「……っ、大丈夫、です(^^;笑い過ぎ、ただけ…!」

笑っている私を見て皆も“仕方ねぇな”って感じになっている。

「はぁ…、皆さんお知り合いだったんですね?」

「あまり関わりたくない人種だがな。」

「だからさ、それ酷くない?!」

「酷くないやん。香澄ちゃん、金輪際コイツに構ったらアカンで?香澄ちゃんの貞操あっという間に無くなるで!」

「忍足さんもヒトのこと言えませんよ?」

ぅわ〜。
言いたい放題、言われ放題。
私は何て返したらいいか解らずぽかーんとしていた。

「香澄ちゃん、帰ろ〜。んで膝枕して(^^)」

いつの間にか芥川さんが私の手を取り、ぐいぐいと引っ張っていた。

「今日は荷物置いたら帰るんです。また明日!」

「A〜(´Д`)」

「慈郎!何どさくさに紛れて香澄と帰ろうとしてやがる!」

「チッ。」

芥川さんが舌打ちした!?
いや、見てない、聴いてない!
幻覚・幻聴だよね?!
戸惑っているうちに、千石さんは端へ端へと追いやられ、私は流されるまま部員達と学校へ帰る道を歩いていた。





「……、何で皆さんあそこに居たんですか?」

「用があったからに決まってるだろ。」

「何の?」

「…色々だ。」

「…………。」

色々、ねぇ…?

「男同士で、ですか?」

「あ、跡部は色々部員におごってくれるんだぜ!なぁ?!」

向日さんの台詞に一同頷いている。

「ふぅん…。今日は何おごってもらったんですか?」

「今日はイタリアンをな。」

「………。ボロが出ましたね?」

「「「「「「「?!」」」」」」」

「あの近辺、イタリアンなんて無かったですよ?」

「お前、見逃したんじゃねぇの?」

「あそこにあったのは雑貨屋さんでした!これ以上シラを切る気なら帰ってから覚悟してもらいますよ?!」

皆がうっと詰まった。
やっぱり付いて来てたのか……(-_-;)

「もう!何でお使いくらい任せてくれないんですか?!そんなに私頼りないですか?!そりゃ、土地勘は無いから心配してくれるのは有り難いですけど…。」

段々と語尾が弱くなる。
駄目。
泣いちゃ駄目。
「ほら、やっぱり任せられない」って思われちゃう。
だけど、私の意に反して目頭が熱くなって涙が頬を伝う。

「皆さんに、ちゃんと休んでもらいたいのに、私、マネ失格です…。」

「「「「「「「香澄(秋山)(さん)は悪くない(です)!!」」」」」」」

みんながみんな、綺麗にハモった。
びっくりした私は、涙が止まったみたい。

その後、どんなに説得してもみんなは納得しなくて「心配だ」の一点張り。
結局、今度から出掛ける時は誰かを連れて行くようにする事になった。
前回よりグレードアップしちゃってなんか凹む。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

みんな心配性、または過保護(笑)。


2009*3*24

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あきゅろす。
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