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テニスの王子様
商店街


自転車置き場に自分の自転車を止め、香澄は商店街のアーチをくぐった。
夕暮れ時の商店街はにわかに活気付いている。
親子連れや学生、会社帰りのサラリーマン、客と話す店主。
香澄はこの喧騒が好きだった。







八百屋の前を通り過ぎようとしたときだった。
目に入ったのは“特価”の文字。
何か理由はあるのだろうが、見た目にはキズも見えない野菜。
香澄は咄嗟に指を差した。

「「これください。」」

誰かとハモったことに香澄は驚いた。
隣を見やればクセのある黒髪に品の良い立ち姿の青年が立っていた。

「あ、すみません、どうぞ。」

「いえ、こちらこそ。貴女が先のようですから。」

「あら、これ頂戴!」
「毎度!」

「「あ。」」

譲り合いをしているうちに横から入ってきた主婦にお目当ての品を買われてしまった。
香澄は青年と一瞬視線が合い、次の瞬間二人とも声を出して笑い合った。





目的が一緒であったため、成り行きで香澄は青年とスーパーへ向かった。
青年は観月はじめと名乗った。

「じゃあ、観月さんは寮生活をしているんですね?」

「ええ、僕ら聖ルドルフのテニス部員は勝つために各地から集められていますからね。」

「それじゃあ節約もしないといけませんものね。大変そうです。」

「それは慣れれば大した苦労ではありませんよ。それにしても秋山さんは不思議なヒトですね。」

「…そうですか?」

「えぇ、大変だと思うのが節約の話というのは僕も初めて訊きました。」

観月は楽しそうに話をしていた。
香澄は納得いかないまでも、楽しそうにしている観月を見て自然と顔が綻(ほころ)んだ。

「…!」

「?どうかしましたか?」

「あ、いえ…。」

ふい、とそっぽを向いてしまう観月を不思議に思いながら香澄は買物を続けた。

「あ、そだ。紅茶切れてたんだ。」

ふと目に入ったお茶のコーナーを見て香澄は指をフラフラとさせた。

「あった♪」

香澄が手にとったのはトワイニングの“ファイン レディ グレイ”だ。

「おや、キミも紅茶をたしなむんですか?」

「あ、いえ、少しかじった程度です。」

「そうなんですか?」

「はい。ついこの間“オレンジ・ペコー”がオレンジの香りがする茶葉でなく枝葉の場所の名前だって知ったくらいです(笑)」

そのあと、観月の紅茶講座が始まった。
本格的に勉強している観月の話は香澄を引き込んだ。





「色々お話訊けて良かったです。観月さんありがとうございました。」

「いえいえ、僕もこういう話が出来るヒトが身近にいないので久々に楽しかったです。」

にこやかに話す観月を見て香澄も微笑んだ。

「あ、秋山さんは携帯をお持ちですか?」

「ふぇ?あ、はい、ありますよ。」

「よろしければアドレスを教えてもらえませんか?また貴女と話をしたいんですけど…。」

「あ、良いですよ。」

赤外線送信でアドレスを交換し、香澄は観月と分かれた。





観月の買物袋から茶葉の袋と「おすそわけ」のメッセージが発見されたのは観月が寮に戻ったあとだった。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

うちのサイトで初の観月さんです(笑)
お小遣い使用例に食費ってなってて迷わず彼を選びました(^^)


2009*3*19
2012.04.15修正

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あきゅろす。
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