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テニスの王子様
昼御飯


本日は晴天也―――。


屋上で昼食を摂る生徒は意外と少なく、昼下がりの屋上は至って静かだった。
普段ヒトの注目を浴びている香澄にも静かに過ごしたい時がある。
そんな時に、屋上に足を運ぶようになった。
そして、教室での一件以来、クラス委員の春日桜と一緒にいることが多くなり昼食時にお小言をもらうことも多々あった。

内容は香澄の昼御飯内容についてがほとんど。

「美味し…。」

香澄の主食はクルミパン。
おかず(?)に小魚アーモンド。
飲み物はパックのイチゴ牛乳。

それを毎日。

舞台で目立つには相応の身長が必要だ。
香澄は世間から見れば小柄な部類に入る。
身長を伸ばすために、背伸びをしたり、ぶら下がり健康器なんぞを使っていたりする。
牛乳はすぐにお腹が緩くなってしまうので断念している。
自分の身体と折り合いが着いたのが1日1回1パックのイチゴ牛乳。
これだと辛(かろ)うじてセーフなのだ。
カルシウムがちゃんと摂れているかは甚(はなは)だ疑問だが…。
その代用品として小魚の摂取に走った、という始末。

クルミパンはただ単に好きなだけ。

それでも香澄にとっては楽しみな時間であり、更に今日は気持ち良いほどの晴天でぽかぽか陽気の中、香澄の頬は緩みっぱなしだ。

「腹減り、減り腹〜。」

面白い調子のフレーズを言いながら屋上にやって来たのは短髪の男子生徒。
両手に溢れんばかりのパンやおにぎりを抱えている。
常軌を逸した量に香澄の目は釘付けになった。
それこそ、“開いた口が塞がらない”状態。
良く見れば、先日乾のペナル茶(ティー)を飲ませた相手・桃城武だ。

「あんなに食べても肥(ふと)らないのは身長に全部栄養いってるからなのかな…?」

香澄は自分のパンを食べるのも忘れて桃城に見入っていた。
その視線に気付いたのか、桃城と香澄の目が合った。

「お前、あの時の…!何見てんだ?!」

敵意剥き出し。
それもそうだ。
あの時のアレはほとんど香澄が仕組んだと言っても過言ではない。
香澄の思い描いたシナリオ通りに進んでほくそ笑んだくらいだ。

「あ、いえ、たくさん食べているなぁ、と思いまして…。」

おずおずと言ってみれば桃城は若干警戒したものの、次の瞬間ニカッと笑った。

「お前はそれだけか?だからちっちゃいんじゃないかぁ?」

ニヤニヤと笑っている桃城に香澄はムッとした。

「…ちっちゃいのは遺伝です!」

ぷんっとそっぽを向いた香澄を見て桃城は楽しそうに笑っている。

「(何よ何よ!自分がちょっと背高いからって〜!悔しい!)」

香澄は黙々と昼御飯をかき込み立ち上がった。
桃城に乾の激マズドリンクを飲ませて復讐はしたものの、スッ転ばされた時の恨みつらみは香澄の中で燻(くすぶ)っていた。
更に今の、自分のコンプレックスを抉(えぐ)った上に塩ならぬ辛子を刷り込む台詞に、完全に香澄の中で桃城はまたしても敵と認識されてしまった。

敵には容赦しない。
それが香澄のモットーだった。
やりかえす力は無くても別の方法で相手をぎゃふんと言わせる。
香澄の場合、ほぼマジックに関することではあるが。

「何だ?もう帰るのか?」

相変わらず大量のパンを食べながら桃城は香澄に話しかけた。

「…それ、気をつけてくださいね。」

香澄はニコリと笑って屋上を出た。

「何だ?アイツ…。」





数分後、パンをかじった途端クラッカーが破裂し、桃城が屋上にいた生徒の笑い者にされていた。

「いつの間に仕込んだんだぁ〜?!」





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

前話に引き続き桃ちゃんが苛められてます(^^;

2009*2*16

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あきゅろす。
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