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テニスの王子様
試験前


学生であれば必ずつきまとうモノ。

中間又は期末考査。

つまりはテスト。

準備に追われて結果に一喜一憂して。
なかなか忙しい行事とも言える。
但し、準備も本番も楽しくは無いが。
そしてそれは、香澄も例外ではなかった。


中間テストを1週間後に控えた日の放課後。

「はる兄〜〜!!数学教えて〜〜!!」

「来たな。香澄がテスト前に俺のところに来る確率は97%だ。」

「あとの3%は?」

「同じクラスの生徒にでも訊くかと思ってな。」

「それより数学!」

余程切羽詰まっているのだろう香澄は今にも泣き出しそうだ。
テスト1週間前ともなるとほとんどの部活は休みとなる。
香澄はそれまで乾の元を訪れるのを控えていた。

香澄は基本、お人好しに属する。
ヒトの都合を気にするし、頼まれ事は断れ無いし、ヒトの邪魔をしないように行動している。
そしていよいよどうしようも無くなり今に至る。

「香澄は典型的な文系だからな。だが手品をする上で理論は必須だろう?数学や物理が苦手でよく出来るな。」

「だってマジックはちっちゃい頃からやってるから身体で覚えたんだもん。ロジックを考える必要無いもん。」

「そうそうモノか?」

「そういうモノなの。」

「なるほどな。」

従兄弟なだけあって、乾と話すのにも遠慮は無い。
香澄は黙々と乾の説明に聴きいっていた。





「はる兄、ありがとうございました。」

然程(さほど)時間を要さずに香澄は試験勉強を終えた。
教えてくれた乾にぺこりとお辞儀をする。

「俺は大したことしていないぞ?」

「んーん、すっごく助かった!はる兄は教えるの上手だからね!ヒトに教えるのって自分がちゃんと理解してないと出来ないことだからさ。」

「そうだな。」

「その点、私は教えるの苦手。マジックのタネは明かしちゃいけないから普段もつい自分が理解したらそれで満足しちゃって…。」

困ったように笑う香澄の頭を乾は優しく撫でた。

「お前にはお前の良さがある。」

完結で言葉は少なくても、香澄にはすとん、と心に響くモノがありとびきりの笑顔になった。

「本当にお前は…。」

乾は穏やかな表情で香澄を見ている。

「はる兄、嬉しそうだね?」

「お前はいつまで経っても変わらないな、と思ってな。」

「はる兄!私いつまでも子どもじゃ無いよ?!」

もちろん、乾はそういう意味で言った訳では無いのだが、香澄は若干怒り気味にそっぽを向いてしまった。

「怒ったのか?」

「いーもーんだ!私がちっちゃい頃からどれだけ成長したか、次の期末で見せてやるからね!」

ぷんすかと怒りながら香澄は廊下の突き当たりまで走って行った。

香澄の背中を見ながら乾は優しく笑っていた。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

乾さん出すと書きやすいんですよね(^^;

他のヒト達とも絡ませろよ、って感じですね(笑)


2009*5*3

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