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テニスの王子様
また今度


結局、私はマネなのに試合が終わるまでずっと樺地君に肩車されたままだった。
いや、見晴らし良くて最高、とか思ったけど…。
ただ、ねぇ?
何か空が近くなって暑かった…。
最後の方は暑くてだるくて樺地君の頭にもたれかかっていた。


マネらしいことをせずに交流試合は幕を閉じた。





「…すみません…何のお構いも出来ずあまつさえこんな高い位置からの挨拶になりまして…。」

羞恥の嵐ですよ!
罰ゲーム?!
樺地君から下ろしてもらえないまま青学生徒のお見送りをさせられる羽目に…。

「元気そうでなによりだよ、秋山さん。」

「あ、不二さん…。」

「跡部達が取り乱すの見れて面白かったしね〜。」

確かこの人は菊丸さんって言ったな。

「クソクソ!取り乱してなんかねーよ!」

そうそう、向日先輩とプレースタイルが似てるのか張り合ってた。
二人がじゃれあってるのを見ると、ネコのケンカみたいに見える。
実際は“犬”“猿”の仲なんだろうけど。





「そいえば、桃城君、青学って“あおちゅうがっこう”の略?」

あらん?
皆変な顔してこっち見てるな。

「だ…だって“せいがく”ってしか読めないんだもん!」

「くくっ…、秋山…、青学はな…。」
「青春(せいはる)台ってとこにあるんだよ!」

跡部さんの言葉を遮るように桃城君が答えた。

「…じゃあ“せいはる中学”?」

「桃城、うちの香澄ちゃんに嘘教えんといて。外でうっかり間違ごうて恥かくんは香澄ちゃんやん。」

「秋山さん、青学は“青春学園中等部”の略だよ。」

鳳君が爽やかな笑顔で教えてくれたんだけど…、爽やか過ぎて何だか怖いモノが…(汗)。

「せいしゅん…。」

青春って、青春?
青い春?
この面子が?
何か明らかに青春なんてすっ飛ばしてるようなヒトが約半数居るのに?(誰だとは言わないけど)

「……ぷはっ!」

だ…駄目…笑ったら、し、しつれい…!

だけど、一度ツボに入った笑いを堪(こら)えるのは無理!

「あっ、あはっ!あははははははははは!!ごっ、ごめん、なさっ、でも…あははははっ!!」

ぐるん、と視界が上下逆転した。
仰け反り過ぎて宙吊り状態だ。
それでもお腹が捩(よじ)れそうになって可笑(おか)しくて。


ひとしきり笑って見た青学メンバーは渋い顔、恥ずかしがってる顔、何とも言われない顔をしていた。

「すみません…、でも久しぶりになまら笑ったっしょや〜!笑かしてもらって有り難うございます。」

「なまら…?」
「しょ?」


「あぁ、方言ですね。私北海道からこの間転校してきたばかりなんです。“なまら”は“凄く”ってニュアンスです。田舎にも居たんでたまに訛(なま)るんですよ(笑)。」

「秋山さん、女の子なんだから少し気をつけたら?」

そう言ったのはパワーテニスを売りにしている河村さん。
ラケット持っていない時は礼儀正しい感じだなぁ。
いや、それより…。

「なして?」

「“なして”?」

「あ、んと、“どうして”、ですか?」

「どうしてって…あまり良い響きじゃ無いんじゃ…?」

「ん〜、それって、ヒトの価値観じゃないですか?私は北海道で育ったことは誇りに思ってますし、方言や訛りを恥ずかしいとは思いません。それも含めて“私”と言う人格です。貴方達が“青春学園”って言う母校に誇りを持っているのと一緒だと思います。死ぬ程笑って失礼でしたけど、他人に笑われたって自分達の中では恥ずかしいモノじゃないですよね?」

河村さんは私のマシンガントークに閉口し、全員が押し黙っている。

やっちゃった…かな?

「秋山の言う通りだな。我々は青学テニス部の誇りがある。」

沈黙を破ったのは部長さんだった。
確か手塚さん。
表情は相変わらず固くて何を考えているか解らないけど、怒っては無いみたい。

「いいマネージャーだな、跡部。」

「ハッ、てめー等にはやらねぇよ。」

心なしか、手塚さんも跡部さんも楽しそうだ。

一悶着あったものの、青学の皆さんは晴れやかな表情でバスに乗り込んだ。

「樺地君、もういいでしょ?下ろして?」

「ウス。」

軽々と樺地君は私を下ろした。
うーん、毎日芥川先輩を抱えてるだけあるよね。
樺地君は跡部さんについて行ってしまった。

「さぁてと!片付けますか!」

ひとつ伸びをしてコートに向かおうとした時だった。

「ねぇ。」

背後からかけられた声に驚いて振り返った。
そこに立っていたのは青学のジャージに帽子を被った男子生徒。
確か、他の先輩選手達に比べて小柄なヒトだ。

「ええと、越前君、でしたよね?どうかしましたか?」

年下だし、別に敬語で話す必要も無いんだけど…何となくかしこまってしまう。

「コレ、乾先輩の連絡先。」

掌の中に手渡されたのはノートを千切ったような紙片に携帯の番号とメアドらしき英数字の羅列だった。

「わざわざありがとうございます…。でも、青学の皆さんはとっくにバスで帰ったのでは…?」

「先輩命令、だってさ。」

「あぁ…。苦労、してるんですね…。」

何だか他人事(ひとごと)とは思えない扱いを訊いて私は越前君に同情してしまった。

「ところで、アンタ今携帯持ってる?」

「ふぇ?あ、ありますけど…。」

ジャージのポケットに入れていた携帯を取り出した。
黒とシルバーのツートーンカラー。
一部市松模様になっていて私のお気に入り。

「ちょっと、何それ。」

越前君が指したのは私の携帯ストラップ。
自分でもやり過ぎかなぁ、とは思ってるんだけど…。

「あ〜、私ね、転勤族でさ、クラスメートからお別れの時にもらったストラップ着けていったらこんなことに…。」

じゃらじゃらと音を鳴らしながら揺れるストラップ。
10個くらい着いている。
貰い物だし、着けないと失礼かな、とか思っていたらこんな状態。
最早携帯じゃないよね(笑)。
ストラップがメインになっちゃうもん。


それに驚きながらも越前君は赤外線を使って私とアドとTel番交換をした。
…あれ?
勢いでやっちゃったけど、何で?

「え、越前君、何で私と…。」

「ん?アンタ面白いからさ、連絡手段欲しかっただけ。うちの先輩方に物怖じしないであんなにズバズバ言うヒト初めて見たよ。」

「う…、だって…。私、ホントに北海道好きだし…。」

「負けず嫌いなんだ。俺と一緒か。」

「え?」

ぼそりと呟かれた声は私には聴こえなかった。

「何でも無い。俺そろそろ行くよ。先輩方にどやされる。またね、香澄さん、メールするから。」

越前君はそれっきり背を向けて走り去って行った。

い、今、さらりと私名前で呼ばれなかった?!
疑問は残るものの、私は山積みの仕事を片付けるためコートへ足早に向かった。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

ヒロインちゃんは牛が好き(*^^*)
北海道弁では「ベコ」と言います(笑)
不二家のペコちゃんの語源ですよ(o^-’)b


てかヒロインちゃん馬鹿っぽくなってすみません…(;^_^A

2009*1*25
2012.04.27修正

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