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テニスの王子様
揺るぎない決意


最近私の周りが騒がしい。
原因は明白。

テニス部レギュラーに度々遭遇するからだよ(怒)


例えばこの廊下の分岐点。
左へ行けば購買だけど、そこには底無し胃袋のブタ+ファンの女子。
右へ行けば中庭に通じていて詐欺師+ファンの女子。
真っ直ぐ行けば屋上へ続く階段を登っていくワカメ+ファンの女子。



正直、この学校の女子は98%くらいテニス部のファンだと思う。

う ざ い!

今までの私なら何も言わなかったさ!
でも今は桜がいる。
今までマネを取らなかったテニス部に超絶美少女の桜。

快く思わない輩も当然いる。

私は、テニス部からの毒牙にもファンからの殺人光線からも桜を護っている。





「私と桜以外死ねばいいのに…。」

「?!香澄、何事?!」

ボソッと呟いただけの筈なのに、隣にいた桜にはばっちり聴こえたらしい。


桜は知らない。
度々下駄箱や机に入っている呼び出し状があることを。
時折教科書に落書きされたり剃刀の刃が仕込まれていることを。

桜には笑っていて欲しいから。
だから、桜には私物は必ず持って帰るように言っている。
ヒトのいる教室ならいざ知らず、放課後なんかに私物を置いていったら格好の餌食だ。
「何で?」って訊かれて、「桜は可愛いから変態に全部持って行かれる」って言ったら桜は笑っていたけどちゃんと私の言う通りにしてくれた。

だから、今は呼び出し状と精々机の落書きくらい。
それくらいなら、カフェの開店準備のすぐ後に学校に行けば証拠隠滅も容易(たやす)い。

「香澄?」

考え事をして呆けていた私を桜は心配そうに見詰める。

「あ、ううん、何でも無いよ。ね、桜…。」

「うん?何?」

「私ね、桜のこと大好きだから、絶対に何があっても桜の味方だからね!」

「どうしたの?急に…。」

桜は不思議がってたけど、いつも思っている。
私は、世界中を敵に回したって桜の味方だから。










ホント、毎日ご苦労様です。私の日課になりつつある桜の下駄箱漁(あさ)り。
中に3通の手紙が入っていた。
こういうのもプライバシーの侵害になるのかな…。
ハサミで封を切り、ピンセットで中の手紙を取り出した。
案の定、桜を呼び出す手紙だった。
しかもその内2通は私の名前を語っている。

馬鹿だなぁ…。
私が桜に手紙書くなら直接会いに行くもんね。
桜を呼び出すなんてありえない。

3通の手紙を跡形も無いくらいハサミで切り刻んでゴミ箱に捨てた後、私は桜の教室へ向かった。



教室はシン、と静まり返っている。
桜の机はいつ書かれたのか、誹謗中傷で真っ黒だ。
油性マジックで書かれた言葉に悪意を感じる。
水性インクで文字をなぞりながら雑巾で拭き取っていく。
こんなモノ、桜に見せたく無いよ。



粗方拭き取り終わり、私は雑巾を洗うため水場へ向かった。

「おや、お前さん…秋山じゃなか?朝早いのう。」

げ。
詐欺師。
あんまり会いたく無い相手だった。

「朝っぱらから掃除か?」

「別に、さ…、仁王…先輩には関係無いでしょ。」

思わず“詐欺師”と呼ぶところだった。

「そうかのう…?」

詐欺師はしたり顔で私を見ている。
そのニヒルなニヤニヤ笑いを止めて欲しい。

「そーです。」

ギリギリと雑巾を固く絞ってパンッと広げた。

「じゃあ。」

踵を返して校舎に戻ろうとした時だった。

「待ちんしゃい。」

ぐ、と二の腕を掴まれた。

「…何ですか?」

私は少し苛(いら)ついた。
ただでさえ桜を傷つけるファン共の嫌がらせでイライラしているところに、その嫌がらせの原因にとやかく言われたく無い。

「お前さん、春日に何かしとるんか?」

何かって何?!
むしろ私はそれが無かったことになるよう奮闘してますけど?!

「馬鹿にしないでよ!私は桜と友達です!桜が悲しむようなこと絶対にしない!!」

どうしてそんなこと言われないとならないの?!
桜を傷つけさせない。
桜を泣かせない。
ぽっと出てきた馬の骨に桜の何が解るのよ!
私はずっと桜と一緒にいて、桜が笑ってくれるようにって思ってきた。

私は掴まれた腕を振り払って校舎へ向かった。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

またしても怪しい方向へ…(;^_^A

2009*1*25

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あきゅろす。
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