テニスの王子様
図書室
今日、香澄は珍しく図書室に足を運んでいた。
学校のホームページにリンクした新聞部の閲覧件数を調べるためだ。
以前、端末に設置したROMを回収し図書室を後にしようとした。
ふと、見知った顔を見つけ香澄は立ち止まった。
「あ、会長さん。こんにちは。」
そこに居たのは生徒会長の手塚国光だった。
難しい顔をして洋書を読んでいる最中に声をかけられ、返事をしようとして手塚は驚いていた。
申請書に許可印を早く押せと急かすような生徒に今まで会ったことが無かったからだ。
皆、順番を守り許可が終わるまで待つ。
そんな生徒ばかりなので香澄のことはかなり印象に残っていた。
「またここ、皺寄ってます。」
香澄は自分の眉間を指して言った。
香澄の身長は低い。
起立している手塚の眉間には背伸びして目一杯腕を伸ばしてやっと届くくらいかもしれない。
届かない訳ではない。
油断していた訳では無いのにそう何度も顔に触れられるのはいい気分のモノではない。
だから敢(あ)えて香澄は手塚の顔に手を伸ばさなかった。
「今日はどうしたんだ?」
話を反らすように手塚は話題を振った。
香澄は別段気にすることも無く話に乗った。
「この間申請許可いただいた部紙の調査です。図書室の端末に入れたROMを回収しにきました。」
「それで何が解るんだ?」
「アクセス件数と日時、いつの新聞の閲覧件数が多いか、逆に少ないか、あとは印刷記録ですね。今後の新聞作りの参考にします。一応校内告知はしましたけど紙面にしていた時とどちらが親しまれるかと思いまして…。」
「そうか…。」
会話が途切れなんとなく気まずい雰囲気になったが、香澄は手塚をじっと見ていた。
「……どうした?じっと見て。何か付いているか?」
香澄の視線に居心地が悪くなったのか、手塚は再度質問をぶつけた。
香澄は良くも悪くもヒトをじっと見るのだ。
自分がどのように見られているか、相手は自分を見ているか、舞台に上がる時に気になるからだ。
観察している訳では無く、表情を読み取ることが習慣として身に付いている。
「いえ、私の癖なんで気にしないでください。じゃあ会長さん、失礼します。」
「あ、あぁ…。」
手塚は、あっさりと退いた香澄に対し、少々拍子抜けしたが、先程まで読んでいた洋書に視線を戻した。
2、3ページ捲った後、洋書の間に挟まっている栞に気がついた。
前に借りたヒトの忘れ物かと思いきや、栞には「会長さんへ」と書かれていた。
「いつの間に…。」
そろそろ桜の季節も終わりに近い。
栞は桜の花弁がラミネートされていた。
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あとがき
またしても部長です(笑)
2009*2*22
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