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テニスの王子様
部活動


「…なぁんだ…がっかり。」

本日は部活動勧誘の日だ。
香澄はお目当ての部活や同好会がパンフレットに載っていないのを見て大きなため息をひとつ吐(つ)いた。
多種多様な部活や同好会を謳っている青春学園にならあるかと考えていた香澄は落胆の色を隠せない。

周りでは一人でも多く新入部員を獲得しようと躍起になっている部活も多い。

テニス部のように実績のある部活ならどんと構えていても部員獲得はそう難しくは無いだろうが…。

香澄はあちこちを冷やかしながら進んで行く。
校舎から離れるにつれ、ヒトも疎(まば)らになっていく。

「…、あの辺で終わりかぁ…。特に魅力的な部活も無かったし…。部活、入らなくてもいいかなぁ…?」

生徒の自主性を尊重する学校、と言う割には部活も委員会も所属しなくてはならない。

「…何処が“自主性尊重”…?」

仕方なく香澄は引き返した。

結局、パソコンが弄(いじ)れそうな新聞部に入ることにした。
香澄にしてみれば「情報処理」「パソコン」「コンピュータ」「奇術」「手品」「マジック」のようなネーミングの部活があれば即入部したのだが、いかんせんその様な部活は見つから無かった。

「あ〜〜、無駄なこと考えても仕方無い!」

ふと気付けば昼休みのチャイムが聴こえた。
香澄はポケットに入れていた500円を片手で弾いた後、指の上で踊らせた。
ちなみに、「コインロール」と言う技だ。
指使いのみでコインが人差し指から中指、中指から薬指・小指へと移動し、また人差し指へと戻っていく。
自由自在に自分の身体を動かせるよう日々練習を重ねる香澄には手慣れたものだった。
「基本は怠ってはならない。」
マジックを教えてくれた亡き祖父からの言葉を今も忠実に守っている。

ヒトは、案外他人には興味が無いモノで、香澄が忙(せわ)しなく指を動かしていても気付かないモノだ。

「うっわぁ〜!キミ、何それ?!」

急に前から聴こえた声。
前方には頬に絆創膏、外はねの髪に猫のような印象の瞳をした男子生徒がこちらを指差していた。

「こんにちは。(^^)」

香澄は観客になってくれそうなヒトには反射的に挨拶するように身体が覚えている。
そのため、営業スマイルが咄嗟に出てくる。

「こんにちは!ねぇねぇ、今のもう一回やってよ!」

無邪気に瞳をキラキラさせている男子生徒を見てクスリ、と笑うと香澄は再び500円玉を動かし始めた。
コインの動きを追う男子生徒の瞳は猫のソレに近い。
感動してくれるのが嬉しくて、香澄はもう一枚ポケットから練習用のコインを取り出し、両手でコインロールを行なった。

ひとしきり演技が終わると、男子生徒から拍手をもらった。
いつの間にかギャラリーも増えている。

「御観覧有り難うございました。」

香澄は笑顔でひとつ会釈した。
パラパラと拍手が聴こえた後、集まっていたギャラリーは散り散りになっていく。

そこには先ほどの男子生徒と色素の薄い髪に優しそうな面持ちの男子生徒が残された。

「キミすごかったにゃ〜!俺、3年の菊丸英二!こっちが不二。キミは?」

「はい、1年の秋山香澄です。」

「僕は不二周助。よろしく、秋山さん。」

「秋山さんって、この間1年の教室で四葉のクローバー出してたよね?」

「あ…、見ていたんですね(^^)」

「うん!あれからまたやらないかにゃ〜って思ってたから見れて良かったよ〜。」

「秋山さんは手品が得意なのかな?」

「はい、祖父に教わってのめりこんじゃいました(笑)」

香澄は社交辞令でもマジックの話が出来るのは嬉しいし、楽しい。
時折暴走するのがたまに傷だが…。





話に花が咲き過ぎてお昼を逃したのは言うまでもない。





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2009*1*13

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