[通常モード] [URL送信]

テニスの王子様
炎天下では





予め決めてあったであろう対戦表を跡部さんから渡された。

その組み合わせにどんな意図があるかなんて、テニス部に関わって2週間足らずで理解できない。
指示されたように対戦相手を振り分けていく。

ダブルス3
滝・樺地vs河村・不二

ダブルス2
宍戸・鳳vs乾・海堂

ダブルス1
忍足・向日vs大石・菊丸

シングルス3
日吉vs桃城

シングルス2
芥川vs越前

シングルス1
跡部vs手塚


周りはどよめき立っている。
しかし私にははっきり言って、何処がどうすごいのかさっぱりわからない。
敢えて言うなら、相手校に1年が混じっていることくらいか。

コートの半分を使って3試合同時に開始された。

凄まじいラリーが続いているのは解った。
常人にはできないような技が応酬してるのも。
スコアは1年がつけてくれているので、私はインターバルのためのドリンクやタオルを準備し始めた。





……。

試合が白熱してるのはいいが。
良く体力持つなぁ…なんて考えていた。





要するに、飽きた。

パコパコパコパコ…。
そりゃね?
ここに来て初めてテニス部見た時は一つのことに一生懸命ですごいな、なんて考えてたけどさ。

私、やっぱりスポーツに興味持てそうも無い。
相手の打ち返せない球を打てばいいだけでしょ?
いや、ね?
私には無理だけどさ。
それを難なくやってる君達はすごいけどさ。


いい加減暑いし、周りの声援五月蝿いし、折角用意した氷は既に水だし、ドリンク茹だりそうだし…。

私の朝5時起きの努力は一体何だった訳?!

道産子嘗めるなよ?!
私は特に暑さに弱いんだよ、馬鹿野郎!!
梅雨なんて無くてカラリとした天気の上に緯度が低いから涼しいんだよ!

それに比べて何だよ、この暑さ!!
温室効果ガスの影響か?!
そうなのか?!


「あ゛、あ゛つ゛い゛…。」

溶ける!
へばりつく髪が鬱陶しい。


早く終わらせてよ、この愚図っ!!


口に出してなんて言えないけどさ。
命が惜しいからね。





陽炎が見える。

テニスコートの照り返しがキツイ。





「…あれ…?」

いよいよ視界が揺らいできた。
うん。
私、東京の夏を嘗めてたよ。
今日の最高気温って何度だろう。
風も吹かないような場所であちこち動き回れば急速に体力を消耗する。
しかも厚着してるし。
ふと考えれば私、少し前から汗をかいてない。
体温も高い。



マズイ。

身体にうつ熱が溜まってる。


熱射病寸前だ…!





私はそっとテニスコートを後にした。










水場の日陰に入ると、私の身体はズルズルと崩れ落ちた。

へたれた身体にムチ打って蛇口を捻り、水分補給をしてハンカチを濡らした。

「あ、つー、…。」

母曰く、“重装備”をしてたのがまずかったか…。

力無くジャージのファスナーを下ろし、ノロノロと脱いだ。
ついでに締め付けられてるブラホックも外した。

「あ…、だいぶ楽…。」

目元を覆うように当てたハンカチの冷たさが心地良い。
しばらくしてじっとりと汗をかいてきた。
発汗が出来るようになってホッと一安心。



「キミ、大丈夫?」

優しそうな声が耳についた。
ノロノロと目元を覆うハンカチをずらして声の主を見据えた。

そこに居たのは色素の薄い髪に柔らかく微笑んだような薄目の青学の生徒だった。

「あー、あはは…。何とか平気です…。」
「熱射病?」

「…の寸前、ですね。青学のレギュラーさん、ですよね?も少ししたら行くんでちょっと放っといて下さい…。」

「青学3年・不二周助。キミは…、秋山さんだったよね?そんなに具合の悪い顔してる女の子を放ってはいけないよ。保健室、行こう。」

「ふぇ?…え?!」

ふわり、と身体の浮く感覚がした。


抱き上げられている(しかもお姫様抱っこで)のは解ったけど、ぐったりした身体では抵抗もままならない。

「アワワっ、駄目です、降ろして…。」

「そんなへろへろなのに降ろせないよ。」

爽やか100%で出来ているような清々しい笑顔で、私は保健室まで連行された…。

途中誰にも見られ無くて良かったと思う。





保健室のベッドに下ろされ、私はそのままドサリ、と倒れ込んだ。
大分和らいだとは言うものの、身体にまだ熱が残っている。

「あ、う〜…。ありがとうございます、重かったですよね…orz」

「軽かったよ?それに、そんなに柔じゃ無いよ。」



ちょっと離れて見た不二さんは一見華奢で、こんな綺麗なヒトが私を運んだかと思うと申し訳無かった。
でも確かに見た目より、抱き上げられた時の力強い腕は少し安心出来た。

「跡部には事情を説明しておくよ。だからゆっくり休んでて。」

「何から何まで…。」

申し訳無さと悔しさで余計に涙が出てくる。
それを隠すように私は布団を被った。

不二さんはそれを知ってか知らずかそっと保健室を後にしてくれた。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

はねうさぎも学生時代熱射病起こしました…(-_-;)
日に焼けたくなくてがっつり着込んで(笑)

今は冬なのでそんなこともないと思いますけどね(^^;


2008*12*18
2012.04.27修正

[*前へ][次へ#]

14/46ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!