テニスの王子様
中華鍋だって振るえちゃいます
突然ですが、私は勤労学生です。
朝は新聞配達、放課後は中華料理屋さんで働いています。
新聞配達はともかく、中華料理屋さんっていうのは結構な力仕事です。肉を捌(さば)くにしても中華鍋を振るうにしても。なので、ここでのバイトも変装中です。
「秋山君、八宝菜お願いできるかい?」
「はい、桑原さん。」
お気づきの方もおりますでしょう。
ここは「らーめん桑原」。ラーメンの他に中華料理を提供しているのですが、いや、そうじゃなくて。同じ学校のジャッカル桑原君の家だったりします。
ちゃんとリサーチしなかったのが悪かったんです。とにかく、近場で賄(まかな)いが出るバイトを探して辿り着いたのがここだったということです。
ここには、ジャッカル君の友達である丸井君も時々来ます。バレる確率高い場所ではありますが、案外私って地味に学校生活を送っているのでスルーされています。
生徒会には申請をしなければならないので、柳君にはバレてますけど。どのみち、2月のことがあって三強には私=怪力っていうのはバレているから隠しても仕方のないということ。
ところで、何故、私が怪力であることがテニス部レギュラーにすらバレていないのかというと、一言で言うと柳君の采配と幸村君の独裁政治によるものである。
「その力、我が部に貸してもらえないだろうか。」
「は?冗談じゃないんですけど。うち貧乏なので部活に勤(いそ)しむ時間はありません。大体にして、辱(はずかし)めを受けたとかでそちらの部長さんに、強制的に花壇の世話させられるんですけど。」
「それは…すまない。」
「ところで、私のこの力のこと、バレたくなかったんです。バラした私の不注意でもありますけど、黙っていてほしいんです。もしどこかで漏洩したと判明した場合、私学校辞めますので。」
「それは…精市にも言ってあるのか?」
「もちろんです。渋々承諾してくれましたよ。」
「そうか…。解った。俺達も精市の機嫌を損ねたくはないからな。キミのことは俺達だけの秘密ということでいいだろうか。」
と、いった具合に、2月にあの3人にバレてから約3カ月。
私は夕方までの元の姿と夕方からの変装、という二重生活を未だに続行することができている。
話してみれば、柳君も真田君もいい人で、義理堅く、幸村君を助けたということで頑(かたく)なに私の秘密を守ってくれている。
「桑原さん、できました。」
「相変わらず速いね。キミを雇って本当に良かったよ。飲み込みはいいし、ハイカロリーコンロを簡単に扱ってくれるからね。」
「いえ…必要に迫られてのことですから…。」
「家大変なんだろ?残った食材持ってっていいぞ。」
「いつもありがとうございます。桑原さんのところも大変なのに…。」
「いーってことよ!秋山君が来るようになってから客もたくさん入るようになったからな!イケメン効果だな!!」
「ははっ……。」
私、女なんですけどね。
イケメンて(笑)。
でも確かに、女子大生とか会社帰りのOLとか来るなぁ…。あれって私目当てだったんだ。
ごめんね、お姉さま方、貴女達と付き合えなくて。利益に貢献してくれる点ではとても感謝しています。デートくらいならできなくもないとは思いますが(笑)。
ガシャンっガシャンっ
いい。
ハイカロリーコンロででっかい中華鍋を振るうと自分が怪力でもいい気分にさせられるから。
私、バイト先では上司にもお客にも恵まれています。
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あとがき
うわ…久しぶり過ぎて何が何やら…。
2014.05.08
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