[携帯モード] [URL送信]

テニスの王子様
文句があるなら


軽くマネージャーの仕事内容を聞いて、作業にとりかかった。



解ってる。

解ってるけど、憤りを感じずにはいられない。


自然と私は笑わなくなった。





幸い、跡部さんとのやりとりを見ていたクラスメイトは、私を不憫に思ってくれて励ましてくれる。

少なからず味方がいるのは心強い。

全校生徒が敵なんてことになったら登校拒否してやる。





粉を溶くだけのスポーツドリンク万歳。
楽過ぎて泣ける。
レギュラー用のボトルと準レギュラー以下のクーラントをコート横に放置して、私は部室へ向かった。


……。
洗濯くらい自分でしやがれ。
あちこちに散乱するタオルやら練習着やらをかき集めランドリーボックスにぶち込んだ。
200人分って酷くない?!
箱入りにもほどがある。
しかも、洗濯機何台あるんだよ…。
確かに少ない回数で終わるけどさぁ…。


洗濯機を回している間にタオルの準備をした。
濡らした物と乾いた物。
濡らしたタオルだけじゃ身体冷えるし。
いくら夏も近づく、と言っても夜になれば肌寒く感じてしまう。
スポーツなんて身体が資本なんだから温まっていた方がいい。

ぎゅうぅぅぅ

ちょっと恨みが籠りすぎた。
タオルに恨みはないからなぁ…。



いや、やっぱあるわ。

「しゃっこい…。」

絞り過ぎて手の感覚が怪しい。
指先かじかんできた…。

息を吹き掛けて手を温める。

「ぅう〜!」

しばらくしてようやく指の感覚が戻り、大量のタオルをカートに載せて運んだ。





コートで何かあったのか、妙にざわついている。
比較的外側にいる鳳君に声をかけた。

「何かあったの?」

「秋山さん!」

鳳君が私の名前を言うと部員が一斉にこちらを見た。


何?


「嫌がらせか?」
「どういうつもりだよ。」
「こんなの飲めねえよ。」

どうやらドリンクのことを言っているようだ。

「?ただ粉溶かしただけですよ?何も準備してないですから急に別の味になんか出来ません。」

「そうじゃ無いよ!味が薄いって!」

「?薄めてますよ?規定量の1.5倍で。」

「なっ…?!」

「確かに電解質の補給は必要ですが、原液を飲めば喉が乾くでしょう?体内から激減しているのは電解質より水分です。水分が少ないと体内に入った電解質の方が濃度が濃くなりますから余計喉が乾くし、身体の動きも鈍ります。練習効率も半減しますよ?」

それ以上、部員は何も言わなかった。
言いくるめられて渋々、と言った感じだ。

だって本当のことだもん。
て言うか、そんなことも知らなかったの?

自己管理出来てない証拠だよ。


タオルを運んだ後、丁度終わった洗濯機から洗濯物を引っ張り出した。
パラソルにタオルを干し、ハンガーに練習着を架ける。

「あ…。」

汚れ発見。
洗濯機で落ちなかった泥汚れ。

「ブルー石鹸なんて無いよね…。ホームセンター辺りまで行かないと…。」

仕方なく今日は洗剤を振ってタワシで擦った。
よく見ないと気付かない程度までは落とせた。
文句言われたら「自分でやれや、ボケ」くらい言っても罰は当たらないよね?





練習が終わって、ボトルやタオルを片付けに行った。
ぶちぶち文句言ってた割りにドリンクはほとんど空だった。
明日は温かいお茶も用意しよう。
何か良さそうなドリンクも調べて来よう。


俺様には腹立つけど、みんな一生懸命テニスしているのが解ったから、やるなら徹底的にサポートしよう。





日誌を前のページを見ながら書いていると、フッ、と陰りが差した。

「秋山さん、大丈夫?」

「鳳君…。」

目の前には鳳君が立っていて、心配そうに私を覗き込む。

「あとこれ書いたら終わりだから大丈夫。」

そう言って笑えば、鳳君はホッとしたようだ。

「良かった…。」

「え…?何が?」

鳳君は困ったようにはにかむ。

「秋山さん笑わないから、心配してたんだ。」


心配…。


「私、仕事してるよ?」

「え?」

「サポートするって決めたから、仕事はするよ?でも、無理矢理マネにさせられたのは腹立つし、他の部員と仲良くしようとは思ってない。鳳君は友達だから態度変えないから大丈夫。」

鳳君はぽかん、とした表情で私を見ていた。

これは私の本心だ。
私が認めたヒトは信用するけど、ほとんど知らないようなヒトに心を開く気は無い。

敵は敵。

知り合いだから、表面上の付き合いはしてあげる。

必要なら笑ってあげる。



だけど、心の中には踏み入らせない。

私は、壁を作る。

精々虚像の私と付き合えばいい。





ヒトと長く付き合うことの無かった私の、処世術だ。





理に敵ったことをして、文句は言わせない。


それでも文句があるなら、好きにすればいい。


私は、万人に好かれるとは思っていない。
私を認めて、私が認めたヒトが私を信じてくれればいい。





「じゃあ、また明日。」

私は日誌を部長の机に置いて部室を後にした。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき


お久しぶりの更新です。

マネなって初仕事。
いきなり険悪ムードです(-_-;

頑張ってるヒロインちゃんの姿を見せて(魅せて)いきたいです(^^)/


2008*11*12
2012.04.27修正

[*前へ][次へ#]

11/46ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!