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テニスの王子様
ヘタレを見舞いました


今日は朝から静かだと思っていた。仁王の姿が見えないからだ。仁王が休んだというのを知ったのは3時間目が終わってからだった。廊下でファンクラブと思(おぼ)しき女子が騒いでいたからだ。
休み、で思い当たる節がある。
昨日仁王は、傘を買いにコンビニまで土砂降りの雨の中を走ったからだ。雫を拭いている最中も、若干冷えた体に触れて少し驚いたものだ。

「(風邪、引いた?)」

「生きてる?」みたいなメールを送ってみたが、返信は無かった。

と、言う訳で、仁王の家まで来てみたのだが。思えば男子の家に行くなんて生まれてこのかた初めてだ。若干戸惑いながらも、インターホンを押した。
中でどたばたと騒がしく走っている音が聞こえ、鍵が外れてドアが開いた。
そこにいたのは小さな仁王。

「え?ちょ、仁王、縮んだ?」

「…僕、弟です…。お姉さん、誰ですか?」

「あ、ごめんなさい。私、仁王、じゃないな、雅治君の…友達?でもないな…同級生と言えばそうなんだけど…ご主人様…?いや違う違う!!えーと……!!」

「もしかして、香澄さん?」

「え?知ってるの?」

「まーくん…兄がよく話してますから…。」

どんな話を吹き込んでるんだ、仁王の奴!
立ち話もなんなので、と仁王の弟の稔治君は私を招き入れてくれた。仁王の弟なのに、こんなに礼儀正しいなんてなんだか拍子抜けしてしまった。

「お見舞いですよね?まーくんはこの部屋です。今は寝てると思いますけど…。」

「ご丁寧にありがとうございます。あ、稔治君これ、皆さんでどうぞ。」

「…こちらこそ、ありがとうございます…。」

あ。照れてはにかんだ表情(かお)はどことなく仁王に似てるかも……。やっぱり兄弟だなぁ…。
控えめにノックして、私は仁王の部屋のドアを開けた。カーテンを引いて薄暗くしてあるからはっきりとは解らないけど、部屋の中は至ってシンプルだ。机と本棚とベッド。
ベッドには仁王が寝ていて、若干浅い呼吸を繰り返していた。

「(うわ、熱い…っ!)」

おでこに載ってるタオルを取って手を当てれば、結構な熱。ベッドの横に置いてある洗面器には氷水が張っていて(きっと稔治君が持ってきたんだろう)、タオルを浸して絞りなおした。
そっとタオルをおでこに置くと、ふっ、と仁王が目を覚ました。

「あ…起こしちゃった?」

「………。」

仁王は焦点の合わない目でぼんやりと私を見ていた。すると、にゅ、と仁王の腕が私の方へ伸びてくる。

「なっ?!ちょ、なに?!!」

急にぎゅうぎゅうと抱きしめられ、私はパニックを起こした。

「香澄ちゃんだぁ〜vvV」

「ちょ、なになになんなの?!はな、放して!」

「嫌じゃ!!」

仁王は顔を擦りつけるように、私を抱きしめていた。熱で加減ができないのか、結構な力で振り解けないので、しばらく仁王の好きにさせていた。すると、仁王は満足したように、笑って寝ていた。

「まったく…。だから風邪引くって言ったのに……。」

いつもより高い体温だからか、ぬくぬくしていて、私もしばらくすると瞼が重くなって、いつの間にか眠ってしまっていた。





様子を見に来た稔治君の絶叫に目を覚まして、あまりの恥ずかしさに「ごめんなさい」を連発して、とりあえず仁王家から一目散に逃げ出した。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

「稔治」は「としはる」と読みます。
におちゃんとお揃いで4文字と「治」の字を入れたかっただけwww
熱が出てて、夢と勘違いして色々やっちゃえば良かったかな←

2012.10.15

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