テニスの王子様
ヘタレと下校しました
期末考査が無事に終わって、順々に結果が返ってきて、得点通知表が渡されたその日。
仁王が珍しく勉強を教えるなんてことをしたから雨が降ってます。でもまあそのおかげで期末考査は赤点なく終えられたんだけど。
「どうしてくれんのよ、仁王。」
「お、俺のせいじゃなか!!」
仁王は今にも泣きそうな顔をしている。
「ここ、まだ玄関だって知ってる?」
そう言えば、仁王はぐっと口を閉じた。
なぜ私が仁王と一緒にいるのかと言えば。その赤点を免れたから、としか言いようがない。
結局、数学だけじゃなくて仁王はそこそこいい頭をしていて、私は教わりっぱなしだったのだ。
そして、今回の成績が良かったことをどこから聞きつけたのか、仁王が私の教室前で待機していたのだ。
―――頑張った犬にご褒美が欲しいなり―――
そう言って拉致られ、現在生徒玄関に居る訳だ。仁王は私と一緒に帰りたいらしい。だけど、雨が降っていて立ち往生しているんです。
本日の降水確率は10%。ほとんどの生徒は傘なんて持ってきている訳もなく、濡れながら帰る者、家族に迎えに来てもらう者、雨が止むまで待つ者。
「…どうしようかな…。」
「少し、待つか?」
「んー。まぁ、何もないしね。」
と言いつつ、雨が止む気配は全くと言っていいほどない。玄関先でぼんやりと雨音を聞いて30分程経った頃だろうか。
「ちょっと待っとって。」
「え?ちょ、仁王?」
仁王は急に雨の中を走って行ってしまった。雨は激しさを増すばかり。
「(こんな雨の中、バカじゃないの?!)」
私は一度校舎の中に入った。
生徒玄関に戻って少しした頃。
パシャパシャと音を立てて、私に近付いてくるのは紛れもなく仁王だ。その手にビニール傘を持って。
「香澄ちゃん……っ!」
「…なにやってんの?」
「傘、買ってきたなり!」
仁王は満面の笑みで傘を指し示す。まるで“褒めてくれ”とでも言うように。
「私、怒ってんだけど。」
「なんでじゃ?!香澄ちゃんを一人にしたからか?!」
「そうじゃなくて!なんでびしょ濡れになるの?!風邪引くでしょう?!」
私は保健室で借りてきたタオルで仁王の髪や肩を拭く。仁王は抵抗することなく私に身を任せていた。
「だって、香澄ちゃんが濡れて風邪引くのが嫌じゃったんじゃ…。」
「…その気持ちは嬉しいけど、だからって仁王だけ濡れることないでしょ?」
「香澄ちゃん…。」
あらかた拭き終わって、そのままタオルを仁王の肩に掛けた。冷えると風邪を引きやすくなるからだ。
「それに、なんで傘一本なのよ。」
「こ、これしか売ってなかったなり!」
「…ふーん。」
仁王は嘘が上手い。そういう時がある。今、焦ってるように感じはしたけど……。
いきなりの雨で本当に一本だけだったのか、相合傘がしたくて一本だけしか買ってこなかったのかは不明だけど、私は仁王と傘を差して家へと帰った。
途中のコンビニに傘が売っているのを見ない振りをして。
______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あとがき
もちろんにおちゃんは香澄さんと相合傘がしたくて1本しか買ってこなかったんですよwwwww
2012.10.15
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