テニスの王子様
ヘタレと勉強しました
期末考査が近くなった今日この頃。
私、然程(さほど)頭良くないんですよ。普段から予習復習はしているものの、飲み込みが悪いといいますかね。
「(あ、れ?ここ、この公式で、合ってる、よね?でも解が変な数字になる……?)」
図書館で数学の演習問題を解いていると、解らないところにぶち当たった。こういう時、図書館だと参考書も置いてあるから調べ物にはもってこいなのだ。
私は、ノートと教科書を挟み合わせて、数学の参考書が並ぶ棚へと足を運んだ。
この学校、大学の附属なだけあって、高校生も大学生も利用する図書館があるのだ。なので、お目当ての物以外にも高等数学と呼ばれる理論ものまで揃っているのだ。読む気にはなれないけど。
「(あ、あった。)」
目当ての参考書に手を伸ばした時だった。
「(うっそ!届かない!?)」
側には脚立や踏み台もない。どうにかその参考書を取ろうと精いっぱい背伸びをする。
「危ないぜよ。」
背後からひょい、とその参考書は取られ、私の手元へと渡された。
後ろは、振り返るまでも無い。こんな独特な話し方はアイツしかいない。
「ありがと、仁王…。」
「礼には及ばんなり。」
「あの、近いんだけど。」
参考書を手に、元の席に戻ろうと思ったのだが、目の前に仁王、両サイドに仁王の腕、後ろは本棚。
なんで私、囲まれてるの?
「試験勉強か?」
「この時期にそれ以外に何かある?」
「いんや…。」
仁王はクツクツと笑う。なんか、いつもと雰囲気が、違う?でも、何だか変な感じは少し前から感じていた。
ヘタレのくせに。時々ドキリとするくらい艶っぽくて意地悪なんだ。
余裕ぶってる仁王の態度に段々とイライラして、私は仁王を向こうへ押しやった。
「香澄ちゃん…?」
「勉強の邪魔しないで。犬なんだから主人の言う事きけるでしょ?“ハル”。」
「っ!」
わざと名前を呼んでやれば、仁王は嬉しそうに私を見る。やっぱりただのヘタレだ。
「香澄ちゃん!俺、数学得意なりよ!」
「……私に自殺しろって言ってるの?」
仁王に勉強を教わるなんて、そんなところをファンクラブに見られるのなんて自殺行為に他ならない。
「大丈夫なり!奥に行けば入口から死角になるから気付かれないぜよ。」
どこからその自信がくるんだ。もしくはそういう経験がある、と?
更に私はムカムカしてきた。
「…教えさせてやらなくもない。」
「うんっ!!」
仁王がキラキラした目で私を見ているのを見て、さっきまでのムカムカは引っ込んだ。
なんで私、仁王の言動で一喜一憂してる訳?
自分の気持ちが解らないまま、私は奥の席で仁王に数学を教わった。
「で、ここにこっちの値を当てはめると…。」
「あ、そうか。それでこうなるんだ……。」
数学が得意だと言うのはウソではなかったようで仁王の説明は懇切丁寧だ。
おかげでさっきまでの疑問点がすっかり解決した。
「ありがとうね、仁王。」
「ご主人のためじゃけえ、犬は頑張るなりよ。」
ここは図書館で静かにしなければならないのは解っているんだけど……。
クスクスと声を抑えて笑った。
______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あとがき
香澄さんはツンですかね。キャラが固定しないな……(-_-;)
大分打ち解けたんじゃないかとは思うんですがね。
2012.09.21
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!