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テニスの王子様
ヘタレと食事しました


あの野郎。私の中で黒歴史のプリクラを所持しているのをいいことに、事あるごとにおねだりと言う名の脅迫をしてくるようになった。
それの延長で、今私は、裏庭で仁王と昼食を摂っている……。
今すぐこの場から立ち去りたい。

「香澄ちゃん、食べんのか?」

「胃がキリキリしてそれどころじゃねーよ。」

一応膝に弁当箱を抱えている訳だが、包みを開く気にもなれない。一方、隣に座る仁王は嬉々として弁当の包みを開けている。
仁王が弁当なんて珍しいって?
脅迫されて作らされましたけど何か?
大体にして、自分の弁当なんて母に頼んで作ってもらっていたのに、「香澄ちゃんが作った弁当が食いたいなり」なんて脅迫メールが来たもんだから朝5時から起きて、母の指南の元作りましたとも。そのせいで午前中の授業は半分くらい朦朧とした状態で聴く羽目になった。

「!」

弁当の蓋を開けた仁王が固まった。ザマーミロ!!
嫌がらせにキャラ弁(犬)にしてやったんだもんね♪
まぁ、ここには仁王の弁当を覗いて大笑いしてくれる輩は皆無なんだけどね。

「香澄ちゃん!」

「え?!ちょ、なに?!!」

いきなり仁王が抱きついてきた。結構なタックルだったのでそのまま押し倒されそうになった。絶対にそんなことにさせるかと腹筋に力入ったけど。

「すごいなり!俺嬉しいぜよ!こんな手の込んだ弁当、俺の為に作ってくれたんか?!!」

逆に喜んじゃったよ。くそう!恥ずかしがってうろたえている姿を見て嘲笑(あざわら)ってやろうと思ってたのに!!!作戦失敗過ぎる!

仁王は嬉しそうに、卵焼きに箸を付けた。
何か、バカらしくなってきた。私の思惑と違う反応するんだもん、仁王の奴。
つまんないを通り越して笑いまで込み上げてくる。

「どうしたんじゃ?香澄ちゃん。」

もごもごと卵焼きを頬張りながら、仁王は不思議そうに私を見ていた。

「何でもない。いいからエサ食べなさい。」

「プリッ。」

味は…大丈夫な筈。味見したから。
さすがに食べられないものを渡すと、私の沽券に関わるからね。“料理の一つも出来ない女”って。仁王に馬鹿にされるのは癪だから普段使わない頭と体を120%使ったと自負している。
ちょっとしたこの沈黙が居心地悪くて、私も包みを開けた。おかずの中身は一緒で、米だけおにぎりだ。ゆかりの俵握りを一口食べた。

「美味いなり。」

「…そう…。」

ちょっとホッとした。
その後も特に会話はなく、黙々と弁当を空にしていった。





食事が済んで、仁王はごろりと横になった。私の太ももの上に。所謂(いわゆる)膝枕だ。

「このっ…バカ犬っ!」
「ギャンッ!」

バチンっといい音がするくらい、私は仁王のおでこを引っ叩いた。
仁王は恨めしそうに、涙目で私を見上げている。

「うぅ…香澄ちゃん酷いなり……。」

「ていうかどけろよ。」

私は、仁王の頭を足から下ろそうと力を込めるが、尚も仁王は私の足から頭をどけない。

「嫌なり!俺は犬なんだから主人の膝の上で寝たって構わんじゃろ?!」
私が構うんだよ。

仁王は私の言葉を無視して寝続ける。時々身動ぎするが、仁王の頭や手がくすぐったい場所に当たってビクッと体が跳ねる。

「っ!!やっ、ちょ!そこダメ…っ!んっ!」

とうとう我慢できなくなって、私は無理矢理仁王を押しやった。ていうか、私変な声出してて恥ずかしいっ!!

仁王の馬鹿!!

私は一目散に教室へと戻った。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

ちょっとやらし、ゲフン……膝頭の少し上って、ぐりっとされるとくすぐったくないですか?
はねうさぎはやられたことがあります。もちろん女子にです←
ぞわっていうか、こしょばいっていうか…。

香澄さん、つやっぽい声出しちゃっていたたまれなくなっちゃったんです。

2012.09.20

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