テニスの王子様
ヘタレと絶交しました
月曜日。
私は酷い顔をして鏡の前に立っていた。
私はあの後、全速力で家に帰った。ゴハンも食べずに布団にもぐって。でも、どんなに眠ろうとしても、あの事が頭を占拠して恥ずかしさと苛立ちで一向に眠れず、朝を迎えた。
「うぅ……頭痛い、眠い……。でも学校行かなきゃ……。」
熱がある訳ではないので、もそもそと制服を着て家を出た。
「う…、香澄ちゃん…。」
マンションの前でバカ犬が尻尾を下げて待っていたのを無視して、私は学校へ向かう。
くそっ!眠くて真っ直ぐ歩けない!!
「香澄ちゃん、フラフラなり!俺に掴まっt」
「触んないで。」
私の方へ伸ばしてきた手を、パシンと払いのけた。
「っ!……香澄、ちゃん…。」
私は尚も仁王を無視して歩いた。その数歩後ろをとぼとぼと付いてきてるのは解っていたが、今の私に仁王を気遣う余裕なんてこれっぽっちもない。
何とか辿り着いた教室の自分の席で、私は授業が始まるまで突っ伏した。
「香澄、どうしたの?今日は具合悪そうだね。」
「ん?うん…ちょっと、寝不足。」
「珍しいね。香澄が夜更かしなんて。」
「だよね…。ごめ、先生来たら起こして…。」
私はこれ以上話したくもなくて、眠いことを言い訳に話を遮った。
そしてようやく昼休み。
昼寝の邪魔をされないよう、私は人気のない裏庭の木陰に腰かけた。
携帯のアラームをセットして、すうっと目を閉じた。
さわさわと気持ちいい風が吹いていて、もう少し寝ていたいな、なんて考えている時だった。
「香澄ちゃん、寝てないのは、俺のせいか…?」
今一番聞きたくない声がして、眉間に皺が寄った。
単なる夢かと思いきや、うっすらと目を開けると、私の隣には仁王が座っていて、あろうことか私は仁王の肩に頭を預けていた。
「ぅ、わっ!ちょ!!」
「急に動いたらいかん!」
密着していたのが恥ずかしくて、私は勢いよく仁王から離れた。その途端、くらり、と眩暈がした。まだ私の頭はよく動いてなかったらしい。
ふらっとよろめきながら膝をつき、腕を伸ばして仁王を牽制した。
「一体何の用?」
「あの、俺…。」
何かを言いたげに口が開くが、言葉を探しているんだろう。言いたいことが見つからず、キュッと口を引き結んでいた。
「……謝るのなら、許す気ないから。」
「謝りはせんよ。俺は、悪いことしたとは思っちょらん。」
仁王は、俯きながらそう言う。
「私の気持ちは無視でそういうこと言うんだ?」
嫌々ながらも仁王を側に置く事にしたのは私だ。だから、少なくとも側に居て不快だと思う事は少なくなったから。
では、私はなんでこんなにイラついているのか。
「主人の手を咬むような犬はいらない。」
「香澄ちゃん…?」
「私に、近寄らないで。」
「香澄ちゃん!!」
縋(すが)ろうとする仁王の手を強引に振りほどいた。
そうだ。私は、裏切られたんだ。
少しでも仁王に気を許した私が悪かったんだ。
大丈夫よ。元に戻るだけ。
私は単なる生徒Aに戻って、仁王と関わることはしない。
ただ、それだけ。
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2012.09.19
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