テニスの王子様
ヘタレがキスしました
私の誕生日を知れた仁王は気持ち悪いくらいハイになっていた。付き合うこっちが疲れる程。
「…そんなに嬉しい訳?」
「ピヨッ!!」
まぁ、誕生日ごときでここまで喜んでいるのだから、私も顔が綻(ほころ)んでしまうのは仕方ないと思う。
その後、仁王がクレーンゲームでウサ●ッチのビッグサイズぬいぐるみを取ってくれて、ジュースまでおごってくれて私の機嫌は単純なくらい直った。
「それで良かったんか?」
「うん!ハル、ありがとうね!これ欲しかったんだ!」
「(か、可愛っ!!)ほ、ほうか……!」
そう言う仁王がだらしないくらいの笑顔で、私は若干引いた。それでもこの人形のお礼はしなけばならない。なんせ3プレイ500円だもの。ジュースの100円もプラスして600円か。
「ハル、お昼だしなんか食べようか?コレのお礼におごるよ。」
「え?ええよ。俺そんなに食べんし…それなら、ひとつお願いがあるんじゃが…。」
「ん?何?」
「俺とプリクラ撮らんか…?」
「っ!!!ぶほっ!!!」
私は口に含んだジュースを噴き出しそうになり、それをすかさずハンカチで押さえた。うあぁぁぁぁ…このハンカチ今日はもう使えない……。
「そんな動揺せんでも…。」
「するよ!!」
だって仁王がプリクラとか……っ!!何か似合わないんだもん!←失礼
「ええじゃろ…?今日の記念に一回くらい…。」
「嫌。」
「即答?!!」
「大体そんなもの撮ってどこに貼る気よ。」
「貼らんよ!飾るんじゃ!!」
「余計タチ悪いわっ!!」
そんなもの飾られた日には、仁王の家族とか友達とかに曝されるってことじゃないか!!
「駄目、か……?」
今日二度目のおねだりだ。あまり調子に乗らせてはいけない。
でも、この人形の義理もある訳で……。
「〜〜〜〜〜……………。はぁ……。わかった。ただし飾るのは勘弁ね。人目に曝さないこと。それなら撮ってもいい。」
「っ!!いい!!誰にも見せんけぇ、一緒に撮るなり!!」
そうして仁王は、いそいそとプリクラの機種を選びだした。
正直、私はプリクラに限らず写真ってあんまり好きじゃないんだよね。撮るのは好きだけど撮られるのは嫌い。自分を撮るよりもっと綺麗なモノも可愛いモノも溢れているんだから、充分じゃない?
そうして、仁王はゲーセンの一番奥に追いやられている機種に、私の腕を引いて入った。
「…古そうなのでいいの?今って落書きとかできるのあるんでしょ?」
「ええよ。俺もよう解らんし、フレームだけで充分じゃき。」
そう言って、仁王は楽しそうにフレームを選んでいた。
「5枚撮って、そのうちの3枚選べるんじゃて。」
「へぇ…。」
撮り直し機能が付いてる方がいいんだろうけど、きっとそれだと延々と撮る輩がいるからそういう作りなんだろうな……。
機械が可愛い声でカウントダウンを取る中、私は仁王に言われるまま、ポーズを取った。
向かい合わせでダンスみたいに手を合わせたり、普通にピースしたり、顔を寄せ合った、り。
「ちょ、ハル、近い。」
3枚目を撮り終えて、私は仁王を押しやった。油断も隙もない。
そして、4枚目のカウントダウンが“1”になった時だった。
チュ
頬に柔らかい感触。それが、仁王にキスされたのだと気付くのは難しくなかった。一瞬、撮られた画像が画面に映し出されたからだ。
真赤になった私が仁王を殴り倒している時に最後のシャッター音が聞こえた。
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あとがき
殴り倒しているプリクラが欲しい←
2012.09.04
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