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テニスの王子様
ヘタレと勝負しました


「香澄ちゃん、待つなり!」

大分先を歩いていた筈だったのだが、さすがにコンパスが違うとあっという間に追いつかれてしまうものだ。後ろからぎゅっとシャツワンピの裾を掴まれた。

「コンポ、ええのか?」

「うん、見に行っただけだから。誕生日かクリスマスに親に買ってもらうからその下見。」

「ほうか…。…香澄ちゃん、」
「教えない。」
「まだ何も言ってないなり!!」

わからいでか!絶対に誕生日いつ?って訊くに決まってんじゃん、今の流れ!いや、話出したのは間違いなく私なんだけどさ。

「駄目、かのう…?」

「駄目。大体、誕生日なんか知ってどうするのよ。」

「そりゃ…プレゼントとかサプライズとか色々なりよ。」

その“色々”が怖いと思うのは私の気のせいだろうか?何をする気かわからないから怖いのかもしれないけど。人間、未知のモノは大概怖いと思うから。

「じゃあ、勝負せんか?」

「勝負?」

「そこのゲーセンで勝負なり。俺が勝ったら香澄ちゃんの誕生日教えるなり!」

「…私が勝ったらもうに…ハルと遊ばない。」

「ピヨッ?!!」

「それでもいいならその勝負受けてあげる。」

「〜〜〜っ!!……わ、わかったなり!」

あら意外。この関係になるまで結構なステップを要したから諦めると思ったんだけどな。
私が選択したのは「サイ●ント●ル」っていうガンシューティングゲームだ。ストレス発散には持ってこいなのだ。結構ゲームオーバーになるけど、その過程も踏まえてクリアした時は嬉しかった。

「香澄ちゃん、これでよかと?」

「いいんじゃない?ちょうど2台あるし、同時に開始して高得点取るかどっちが早くエンディング行くかで。」

「わかったなり。」

そうして、仁王と私の勝負が始まったのだった。
何度かやったことのあるゲームとはいえ、連射が上手くいかない時はイライラするものだ。しかもリロードの遅いものまであるからいつ殺(や)られてもおかしくないスリルで手に汗を握っていた。

「ぷあっ!!」

いつの間にか息を止めていた。順調にステージをクリアしてはいるものの、隣からのプレッシャーは半端無い。合間で盗み見した仁王は真剣そのもので、その横顔にドキリとした。
その顔が脳裏に焼き付いて、チラチラと浮かぶものだから、私の方はラストステージで呆気なくゲームオーバーになった。

そして、結果はと言えば。
目の前で満面の笑みで立ち塞がる仁王を見て察して下さい。

「香澄ちゃん♪約束なりよ!」

「ぅ…わかってるわよ!」

でも非常に教えたくない。

「ていうか…ハル、こういうの得意なの…?」

「もともとダーツが得意での!ガンシューティングも好きじゃ!」

ちくしょう!仁王の得意な分野を選んでしまった数十分前の私を殴り飛ばしたい。

「で?いつなん?」

にじり寄ってくる仁王をかわしながら、生徒手帳を差し出した。
それを受け取った仁王はそれはそれは嬉しそうに中を見ていた。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

どうも、管理人です。
ゲーセンはもっぱらクレーンゲームのみです。
ガンシューティングなんて一回もやったことありません。
だって怖すぎる\(◎o◎)/!

2012.08.12

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