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テニスの王子様
いろいろ通じない


すみません。
ホントにすみません。わざとじゃないんです。

…だから、私を変な目で見ないで…!!





東京に引越し、ここ、氷帝に通い始めて2週間が経った。
クラスメートとも少しは打ち解け始めていた。

「秋山さん、そっち終わった?」

「うん、集めたら終わり。」

今日は教室の掃除当番だ。
箒で掃いたゴミを塵取りで集め、ゴミ箱へ。

「よし、と。」

「じゃあ後はごみ捨てだね。」

「あ、私行くよ?」

「え?悪いよ、じゃんけんしよ?」

「ううん、皆は部活あるでしょ?私は自由参加だから気にしないで。」

私の台詞に渋々ながらも皆はお礼を言いながら教室を後にした。

私はゴミ箱を持ち、焼却炉を目指した。


がこん、がこん。


歩く度に膝とゴミ箱が当たる。
プラスチックだし軽いからいくらぶつかろうが痛くはない。
ただ、静かな廊下で音を鳴らしているのがちょっと寂しい感じがしていた。



「あれ、香澄ちゃんやん。何してん?」

不意に背後から声をかけられ、肩を揺らした。
聞き覚えのある声。
出来れば放っておいて欲しかった。


振り返れば、いつぞやの眼鏡関西人さん。

テニス部には関わりたくないのに…!


「ゴミを投げてくる途中ですけど…。」

「いやいや、ゴミは投げたらアカンやろ。」
え?

「だってゴミ投げないと掃除終わんないじゃないですか。」

「やからってポイ捨てはアカン。」

………。


「あぁ!そう言うことか。すみません、“投げる”ってのは“捨てる”ってことなんですよ。」

ようやく自分が方言を使ったことに気付いた。
…てか、投げる通じないのか…。
結構標準語使ってると思ってたからちょっとショック…。

「なるほどなぁ。自分北海道から来たんやったな。」

「よく覚えてますね。」

「そら、可愛え子の事なら何でも知ってたいねん。」

…。

き、危険!!
何?!
このエロボイス!!
しかも軟派だ!

こんな仲良さげなとこ誰かに見られたら…!!


キノコに引き続きおそらくモテるだろう関西人さん。

周りに誰もいないか視線を巡らせた。
今のところ、誰もいないようだ。

ほっと一息ついたところで眼鏡関西人さんはちょっと苦笑いしていた。

「自分、何キョドっとるん?」

「…こんなとこ誰かに見られたくないだけです。」

私は威嚇するように彼から離れ歩き出した。

「ツレナイやん。侑ちゃん泣いちゃう。」

「侑ちゃん?」

「あれ?自分知らんの?俺侑士言うねん。ほな、呼んでみ?」

「…嫌です。」

実は苗字すら知らない。

テニス部レギュラーを名前呼び…。

こ、殺される!!

「無理です!私まだ生きてたい!」

私はゴミ箱を抱えながら一目散に焼却炉へ向かった。



「おもろい子やなぁ…。」

眼鏡関西人さんが一人ごちたのを聞いた気がした。





ゴミ投げが終わって私は教室に戻った。
案の定教室には誰もいない。
鞄に教科書やらノートやらを突っ込んで帰ろうとした時だった。

「秋山じゃないか。今帰りか?」

声を掛けたのは担任の先生だった。

「そうですけど…。」

「それなら丁度良かった。行き掛けに屋上の鍵閉めて来てくれ。」

先生は鍵をこちらに投げた。

「ぅわっ…と。」

条件反射みたいにその鍵をキャッチした。

「頼んだぞ〜。」

「え?ちょ…、先生?!」

廊下に出た時、先生の姿はもう見当たらなかった。

「屋上じゃ全然行き掛けじゃないじゃん…。」

むしろ玄関から離れる。

先生酷い…!





仕方なく私は屋上に続く階段を昇っていた。
空は既に茜色に染まっている。


「きれー…。」


イヤイヤ鍵閉めに来たけどちょっとラッキーだったかな?

最後の一段を踏み込み、屋上に立った。

「誰かいますかー?」

返事はないようだ。

私は屋上の扉を締めようと内側から引っ張っていた。


「ぅ〜ん…。」


耳に入った小さな声。
誰かまだいたみたいだ。
慌てて屋上に立つけど、人影はない。

「誰かいるの?鍵掛っちゃうよ?」

「ん〜、誰〜?」

ものすごく眠そうな声が上から聞こえた。
校舎への扉の上のスペースを覗こうとすぐ横の梯子に手を掛けた。

夕陽を浴びてキラキラと光る金髪。
それには見覚えがあった。


「芥川さん…。」

ホントにこの人はもう…。
半分呆れながらも可愛い寝顔にほんわかしたのも事実。

「芥川さん、起きて下さい。屋上の鍵掛っちゃいますよ〜!」

「鍵は買えないC〜。」

あれ?
何かデジャヴ?


眠そうに目を擦りながら芥川さんは大きく伸びをした。

「あ、香澄ちゃんだC〜!何々?膝枕してくれるの〜??」

「や、だから、鍵を掛りに来たんです。」

「ここじゃ鍵は借りれないC〜。職員室行かないと。」


話が噛み合ってない…?

「鍵を買う気はないです。鍵は、持ってます。」

チャリ、と担任から渡された鍵を見せた。

「A〜!だって鍵買っちゃうとか借りにきたとか言ってたC〜!」



「あぁ!これも方言か!」

私は一人納得した。
眠い目をした芥川さんが不思議そうに私を見ていた。

「えと、ですね、私が言ったのは鍵を“掛ける”、“閉める”ってことです。」

「そうなんだ〜!面白いね〜。」

いや、面白がられても…。

自分は標準語のつもりでも意外と方言があるみたいだ…。


ちょっと、疲れたな…。



私は今にも寝そうな芥川さんを引っ張りながら屋上に鍵を掛けた。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

北海道の方言編でした(^^)

はねうさぎも一時本州にいたので自分の方言を目の当たりにして軽くショックでした(^^;
有名どころかなと思います。
他に“鍵”を“じょっぴん”って言ったり、“腐った”を“あめた”なんて言ったりします(笑)。

身体がだるいことを“こわい”って言ったり。

楽しんでいただければ幸いです(≧▽≦)/



2008*10*5
2009*4*21修正
2012.04.27修正

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あきゅろす。
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