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テニスの王子様
ヘタレと出かけました


今日は日曜日。仁王を散歩に連れて行く日です。
……嘘です。まぁ、成り行きで仁王と遊ぶことになっただけ。ただ、それだけ。
待ち合わせ場所に行くと、結構な人。私、人混みも嫌いなんだけどな。そんなことを思いながら、適当な場所に腰を下ろした。周りの人達も待ち合わせなんだろう。時計を気にしたり、電話を掛けたりしている人達ばかりだ。それもおしゃれして。
当の私はと言うと、可愛いモノは好きだが、自分に可愛いカッコが似合うかというとそうでないことを自覚しているので、シャツワンピにカーゴショートパンツとニーソの至ってラフな格好。万が一に備えて、顔を隠すための帽子も被って。
しっかし、仁王の奴、誘っておいて時間に遅れるってどういうことよ。現在、待ち合わせ時間から10分経過。
帰ろうかと思った時に、携帯が震えた。着信は仁王。一言言ってやろうと電話に出ると、何とも情けない声が聞こえてきた。

「『香澄ちゃん、来とらんのか〜?俺待ち合わせの30分前から待っちょるのに〜!』」

えらい近くから電話の声と同じ声がする。

「待って、私も5分前には着いてるんだけど。仁王あんたどこに…。」
香澄ちゃん!

のしっと背後から何かが乗っかってきた。

誰?!!

私の上に乗っかっているのは、黒髪、黒縁眼鏡のお兄さんだ。だけど、お兄さんが「プリッ」と言った時点でようやく気付きました。
お前、ホントに誰よ?って言いたくもなります。

まぁ、見事に変装したものだ。普段からペテン師を名乗るだけはある。

「まぁ…化けるもんだね。それならバレないとは思うけど。私も解らなかったわ。」

「すごいか?」

仁王は目をキラッキラさせながら私を見た。
……褒めてほしいと、顔に書いてある。確かに、その努力は認めるよ。
だけど、仁王を褒めるのは何か違うと思う。だって、仁王が私に関わらなければそんな心配皆無なんだもの。

「ところでさ、仁王。」

がぁんっと擬音が付きそうな顔で、仁王は私を恨めしそうに見る。そんな顔したって褒めないもんね。

「今日はどこ行くの?」

「………。」

「仁王?」

「雅治って呼ぶなり。もしくは“雅”とか“まーくん”とか。“ハル”でもよかよ。」

私が褒めなかったのが余程悔しかったのか、仁王はそこを譲らないとでも言うように、私の腕を掴んでその場に立ち止まった。

「“仁王”なんて珍しい名前だとバレるなり。だけど、“雅”とか“まーくん”ならそこらにもいるからバレる心配はないぜよ。」

「なんか…言いくるめられてる感じもするけど…仕方ない。行くよ、ハル。」

「っ!っ!!うんっ!」

そんなに名前で呼ばれるのが嬉しいのか。さすがに“まーくん”は私のキャラじゃないので呼べないけど。
仁王は特にどこに行くかは決めていなかったらしい。
一体何がしたいんだ……。いや、出かけたいってのは解るけど、遊ぶって何したらいい訳?
自慢じゃないが、私は生まれてこのかた男子と二人っきりで遊びに行ったことなんか皆無なんだけど!

「ハル、特に行くとこないならさ、電気街行っていい?新しいコンポ見たいんだよね。」

「いいぜよ。俺も見たいものあったなり。」

とまあ、こんな感じで私が行き先を決めて、それに仁王が付いてくる……。
まんま犬の散歩か……。犬は自分の行きたいように行かせたり、犬の言う事なんでも聞いてたりすると自分が主人だと勘違いするようになるからね。その点では手が掛からなくていいのかもしれない。

「香澄ちゃん、それならこっちの方が、音がいいなり。」

「え?そうなの?」

仁王の勧めるコンポの側に行くと、イヤホンを左耳に入れられた。

「どうじゃ?」

「んー…私そんなに耳がいい訳じゃないんだけど…確かにいい、かもね。」

「じゃろ?」

にひっと笑った仁王が意外と近くに居て(もう片方のイヤホンを仁王がはめていたから)、ぐいーっと仁王を押しやった。

「な、なにするんじゃ?!」

「近付き過ぎ。」

香澄ちゃぁ〜ん!と情けない声を背に、私は店を出た。





______________ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あとがき

雑貨屋さんとか電気屋さんとか好きです。
ゲーセンも好きです。
何時間でも居られますwww
デートっぽくないですねぇ……(-_-;)

2012.07.24

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